動物が温度を感じる際、脳の中では「嗅覚(きゅうかく)」をつかさどる神経細胞やたんぱく質
分子が情報伝達役として働いていることを、名古屋大のグループが線虫の研究で発見した。
においや味の感覚情報を伝える仕組みは線虫と人間でよく似ていることから、この研究は、
人間が温度を感じる仕組みの解明に役立つという。
名大大学院理学研究科の森郁恵教授、久原篤助教らは、土中にすみ、温度を感じたり
記憶したりする能力を持つ体長1ミリの線虫「C・エレガンス」で調べた。まず、無作為に
つくった突然変異体のうち、温度を正しく感じ取れない個体を調べると、「Gたんぱく質」という
感覚伝達に不可欠な分子がうまく働いていないことが分かった。
このたんぱく質分子がどの神経細胞(ニューロン)に存在するかを調べたところ、これまで
嗅覚ニューロンとして知られていた神経細胞「AWC」のなかにあることが分かった。さらに
AWCが正常に働く線虫は、温度を正しく記憶できることも確かめられた。AWCがにおい以外
の情報を伝える機能を持つことが発見されたのは、これが初めて。また、AWCのなかで温度
の情報を伝えるGたんぱく質も、線虫が持つ約20種のなかでにおいを伝える機能が知られているものだった。
Gたんぱく質は人間の脳内にもあり、においや光、味の情報を伝える神経回路に不可欠だ。
久原助教は「感覚情報の処理は線虫と人間でよく似ているので、人間の温度感知の仕組みでも
Gたんぱく質が働く可能性は高い。これが確かめられれば、温度差過敏症など温度にかかわる
難病の治療法開発の期待が高まる」と話している。
(ニュースソース)
http://www.asahi.com/science/update/0411/NGY200804110004.html