首都大学東京の真庭豊・助教授らと産業技術総合研究所(産総研)のグループは、
単層構造のカーボンナノチューブ(CNT=炭素原子の微細管状物質)内の空間にある
水分子が、CNTの周辺にあるガス分子と入れ替わる現象を発見した。「交換転移」と
呼ぶ現象で、目的の分子を交換転移できるため、分子選別フィルターやガスセンサー
などへの応用が期待できるという。
これまで、1ミリの100万分の1というナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微細
な空間で、水やガスなどの分子がどのような挙動を起こすかは明らかにされていない。
研究グループは、直径1・35ナノメートルのCNTを使い、水素、酸素、メタンなど10
種類のガスの挙動を調べた。その結果、低温や高圧力になると、CNT内の空間にある
水分子がCNT周辺のガス分子と交換する現象が起きることが分かった。
交換転移が起きる温度は、ガスの種類や圧力に強く依存し、例えば1気圧のメタンの
場合はマイナス約30度以下になるとCNT内の水分子が追い出されるとともにメタンが
進入した。
一方、ヘリウム、水素、ネオンの場合は、マイナス約170度まで水分子がCNT内に
とどまった。
研究グループでは、水を吸着したCNTを用いると、特定のガスだけを通過する分子
選択的バルブ(弁)として応用できる可能性があるという。また、交換転移に合わせて
電気抵抗を計測したところ抵抗値が急激に変化したため、ガスセンサーとしての応用も
見込めるという。
FujiSankei Business i. 2007/1/22
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200701220004a.nwc 産業技術総合研究所プレスリリース
カーボンナノチューブの分子選択的ナノバルブの原理を発見
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2007/pr20070122/pr20070122.html Water-filled single-wall carbon nanotubes as molecular nanovalves
Nature Materials AOP, Published online: 21 January 2007 | doi:10.1038/nmat1823
http://www.nature.com/nmat/journal/vaop/ncurrent/abs/nmat1823.html