世界的に警戒されている「新型インフルエンザ」対策で、大流行時に入院患者を受け入れる病院リストを
作っているのは10県にとどまっていることが、朝日新聞の都道府県調査で分かった。政府の行動計画は、
現段階で病院リストの策定を都道府県に求めている。大流行時の医療従事者の確保策などを考えている
自治体もまだ一部で、取り組みにも差がある。一方、政府には検疫強化や入国制限などを求める声が圧倒的
に多く、国による「封じ込め」への期待の高さがうかがえる。
政府は、対策の骨格となる行動計画を05年11月に、都道府県も06年1月までに策定した。その後1年たち
、実施主体となる都道府県の具体策づくりがどれだけ進んだか、大流行時の対応を中心に昨年12月から今月
15日までアンケートした。
政府の行動計画は、大流行時に国内で1日当たり最大10万1000人の入院患者が出ると想定。各都道府県
が人口比に応じて受け入れ態勢を整えるよう求めている。だが、病院リストを策定していると答えたのは茨城、
静岡、奈良、福岡など10県。それらの県も、患者への風評を心配する医療機関の要望で、リストは公表して
いない。
大流行時は通常の医療機関だけでは対応できず、臨時の外来窓口などを設けることも想定される。その場合
の医師や看護師などの確保策を「決めている」と答えたのは群馬、静岡、岡山、高知など12県。ただ、確保策
の具体的な内容は「すべての医療機関で対応」「在宅医が対応」というところもあった。
一方で、「決めていない」と答えた自治体の中にも、中学校の学区や公民館などの単位ごとに「発熱外来」を
設ける準備を進めている東京都や広島県のような自治体がある。
医療従事者や、警察、消防、行政関係者などの「社会機能維持者」が業務に従事できない可能性も考慮し
て計画を策定しているのは、18都府県だった。
一方、具体的な対策をつくるうえでの障害(複数回答)では、「政府の財政支援が明確でない」(22道府県)、
「政府の行動計画で都道府県、市区町村の役割分担が明確でない」(21府県)という回答が多かった。政府に
求める施策(自由回答)では、海外から感染者が入るのを防ぐ「検疫強化」(21都府県)や「入国制限」(16県)
に回答が集中した。
調査結果について、厚生労働省の滝本浩司・感染症情報管理室長は「大流行の発生時にパニックになら
ないよう、自治体は地元医師会や病院と協議するなど独自に対策作りを進めてほしい。国も詳細なガイドライ
ンを作成中で、それを示して都道府県の取り組みを促したい」と話している。
http://www.asahi.com/life/update/0118/002.html