結核予防ワクチンのBCGが花粉症などのアレルギー反応を抑制する仕組みを、理化学研究所と
千葉大の研究グループが突き止めた。衛生環境の向上で病原菌にさらされる機会が減ったことが、
最近のアレルギー増加と関係しているという仮説を裏付ける結果だという。25日付の米医学誌に掲
載される。
花粉症やぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は先進国を中心に急増しており、国内
でも患者は国民の3割といわれている。この理由として、衛生環境の向上や抗生物質の多用で、幼少
期に感染性の病原菌に接する機会が減ったことが、アレルギーを誘発しているという「衛生仮説」が提
唱されている。しかし、このメカニズムははっきりしていなかった。
グループは、病原菌の一つである結核菌を弱毒化したBCGワクチンを受けると、アレルギー症状が
緩和されるという報告に着目。マウスにBCGワクチンを接種すると、ナチュラルキラーT(NKT)細胞と
いうリンパ球が25%以上増え、アレルギーを引き起こすIgE抗体の血中濃度が低下した。さらに、NKT
細胞は、IgE抗体をつくる別のリンパ球の「細胞死」を促進し、IgEをほとんどつくらせないようにする働き
を持つことを突き止めた。
また、BCGを接種したヒトの血液を調べたところ、アレルギーを抑える同様のメカニズムがあることも
分かった。
理研の谷口克・免疫・アレルギー科学総合研究センター長は「細菌のどの成分がアレルギーを抑制
するのか明らかにし、治療薬の開発につなげたい」と話している。【下桐実雅子】
毎日新聞 2006年12月18日 23時11分
ソース
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20061219k0000m040136000c.html