究極の薄さを持つ高誘電体ナノ材料
- 低コストの室温溶液プロセスで次世代high-k素子 -
1. 独立行政法人物質・材料研究機構物質研究所ソフト化学グループの長田実主任研究員、
佐々木高義ディレクターらは、厚さ約1nm(原子数個に相当)の新しい高誘電体ナノ材料
(高誘電体ナノシート)を発見し、溶液プロセスを用いた積層により、世界最高レベルの低漏れ
電流特性と高誘電率を有する高容量誘電体素子の開発に成功した。
2. 高誘電率(high-k)材料は、現在の酸化シリコンに代わる次世代の高容量メモリ材料、
トランジスタゲート絶縁膜として、将来の半導体集積回路の心臓部を担うキーマテリアルである。
現在、パソコン、携帯電話などモバイル機器のさらなる高速化、低消費電力化に向け、メモリや
トランジスタ素子へのhigh-k材料の導入が急ピッチで進んでいる。しかし、既存のhigh-k材料では、
製造時の基板界面劣化による漏れ電流増大や微細化による誘電特性劣化など多くの問題点が
山積しており、これらの問題点を克服できる新しいhigh-k材料の開発が待ち望まれていた。
3. 今回開発した高誘電体ナノシートは、新タイプの酸化チタンで、厚さ約1nm、横サイズ数十
μmのシート状ナノ結晶である。このナノ結晶を基本ブロックにして、溶液プロセスを用いた積層
により、超平滑電極上に低誘電体層や欠陥のない積層薄膜素子の作製に成功した。その結果、
膜厚5〜15nmの超薄膜素子で世界最高レベルの低漏れ電流特性(10-6 A/cm2以下)と高誘電率
(比誘電率120以上)を同時に実現した。
4. 今回の成果は、次世代の高容量メモリや低消費電力型トランジスタ用ゲート絶縁膜などに
応用できる画期的な材料提案を与えるものであり、今後、パソコン、携帯電話などのモバイル
機器の発展を支えるキー技術になるものと期待される。また、本技術は、低コストの室温溶液
プロセスで素子の製造ができるため、次世代の低環境負荷グリーンプロセスとしても重要な
役割を果たすことが期待される。
5. 本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CRESTタイプ)の研究テーマ
「光機能自己組織化ナノ構造材料の創製(研究代表者:佐々木高義)」の一環で得られたもので、
国際学術誌「Advanced Materials」(Wiley-VCH社)に近日掲載予定である。
ソース
http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press137.html