北大創成科学共同研究機構と札幌、東京のバイオ関連などの企業は二十五日までに、
人間や動物の細胞中にあるタンパク質を微量でも検出できるシステムを開発した。
細胞の特性を決めるタンパク質は現在、一億個以上の分子量がないと検出できないが、
一万分の一の一万個単位で検出できるようになる。これによりわずかな量の細胞や
血液、尿で病気の診断が可能になるほか、牛海綿状脳症(BSE)の検査や
再生医療への応用も期待できるという。
開発したのは、同機構の伊藤悦朗助教授と同大大学院薬学研究科、同理学研究科、
北海道科学技術総合振興センター(札幌)、イムノバイオン(同)、ノバスジーン(東京)、
成茂科学器械研究所(同)、日立計測器サービス(同)。
伊藤助教授は、ヒトゲノムなど遺伝子解析がここ数年で大きく進歩する一方で、
細胞の特性を決めるタンパク質の分子を検出する技術が高まっていないことに着目。
二○○四年から分子の数が少なくても検出できるシステムの研究に着手した。
タンパク質の検出はこれまで、測定対象の細胞に酵素を加え、タンパク質の分子を
特定するための化学反応を観察していたが、反応で得られるシグナル(発色)が
小さいため、一億個以上の分子量が必要だった。
伊藤助教授らは反応のシグナルを増幅させるため、四種類の酵素の試薬セットを
加えることを考案。これによりシグナルを加速度的に増やすことに成功し、検出に必要な
分子量を一万個単位にまで下げた。一月に特許を申請し、数年内の試薬キット販売を目指している。
細胞内のわずかなタンパク質を検出し、その特性を調べることができれば、理論的には、
がんなどの病気やBSEなどの感染症の診断のほか、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を
利用した再生医療にも応用できるという。
今回の研究は、○五年度に経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業に
選ばれ、八千万円の助成を受けた。伊藤助教授は「北海道発の技術を活用し
関連分野の産業振興につなげたい」と話している。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060226&j=0047&k=200602267500