−導電性フィラー、透明電極への応用に期待−
● ポイント
* 過酸化水素水を使って短時間の処理で単層カーボンナノチューブの金属成分の濃縮に成功
* 従来の透明電極膜に代わる透明電極材や導電性フィラーへの応用に期待
* カーボンナノチューブの精密な構造制御につながる
概要
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノテクノロジー
研究部門【部門長 横山 浩】自己組織エレクトロニクスグループ 片浦 弘道 研究グループ長らは、
過酸化水素を用いた短時間の処理で、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)中の半導体性SWCNTを
除去して金属性SWCNTを80%まで濃縮する事に成功した。
透明導電性薄膜ITO(酸化インジウムすず)は液晶ディスプレイ等広範囲に使われているが、
現在、インジウムが希少資源であることからコスト増や資源の確保が問題となってきている。
SWCNT薄膜は、 ITOに代わる透明導電性薄膜として注目されるようになってきたが、
今まで実用レベルの導電率に達していない。
現在、市販のSWCNT中には高い導電性の金属性SWCNTが33%程度しか含まれず、
電気を流しにくい半導体性SWCNTが多く含まれることが良好な導電性を得られない
理由の一つと考えられる。今回、産総研では市販のHiPco SWCNTを用い、1時間程度、
過酸化水素水により酸化処理するだけで、半導体性SWCNTを選択的に効率よく除去し、
金属性SWCNTの含有量を80%まで濃縮することに成功した。
この処理による純度の劣化や欠陥の増加は見られず、SWCNTの導電性フィラー、
特に透明電極への応用が期待される。
金属性SWCNTと半導体性SWCNTの構造はわずかしか違わないにも関わらず、
酸化反応(広義の燃焼反応)のような激しい化学反応でも、顕著な選択性が観測されることは
重要であり、選択性の機構を解明、応用することにより、これまで不可能であったSWCNTの
精密な構造制御技術の開発へつながると期待される。
(以下略)
ソース 産総研 2006年2月15日
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2006/pr20060215/pr20060215.html