文部科学省は、シックハウス症候群や土壌・水質汚染などの防止に使える
たんぱく質の実用化研究に乗り出すことを決めた。
今月中に農学や工学など専門家40人からなる専門委員会を発足させ、
具体的な研究手法を詰める。政府が新薬開発を本命として進めてきた
たんぱく質の立体構造解析の成果を、医薬品より短期間で実用化できる分野で生かす狙いがある。
研究対象になるのは、有害物質を分解する効果のある各種たんぱく質。
具体的には、ホルムアルデヒドやトルエンを無害化するたんぱく質を
空気清浄機に組み込むシックハウス症候群対策や、硫化水素を分解する細菌から
取り出して量産したたんぱく質を下水処理施設で活用することなどが考えられている。
参考にするのは、生物が作り出す3000種類のたんぱく質を構造解析する
国家プロジェクト「たんぱく3000」の成果で、その情報を元にたんぱく質の一部を改変し、
機能を高めて産業利用する。この手法だと、微生物そのものを使うよりも扱いやすく、
生産が簡単という利点がある。
文科省は今後も医薬品に直結するたんぱく質の解析を重点的に行うが、
新薬開発は10年近くかかるため、短期間で成果があがり、
欧米諸国が手をつけていない分野へ進出することで市場をリードできると判断した。
研究を取りまとめる田之倉優・東京大教授(応用生命化学)は
「立体構造のデータがあれば、たんぱく質改良のスピードが上がる。
洗剤などですでに利用されているたんぱく質を高機能化することもできる」と話している。
ソース 2006年2月8日3時1分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060208i201.htm