南アルプスのライチョウ(国特別天然記念物)が、20年前の調査時と比べ、比較できる地域で
半減したことが、信州大学教育学部の中村浩志教授(59)=鳥類生態学=の調査で分かり、
20日までに、山岳関係の雑誌で概要を発表した。低山帯で数の増えたニホンジカが高山帯に侵入し、
ライチョウの餌となる高山植物を食い荒らしたことが一因とみられる。南アは、世界で最も南の
ライチョウ生息地だが、中村教授は「絶滅の危機にさらされている」と早急な対策を訴えている。
中村教授は2004、05年、環境省の事業の一環で、減少が指摘されていた南アのライチョウの実態を
北部と南部の2地域で調査。生息数を、過去に行った同様の調査結果と正確に比較できるよう、
雄の縄張り内で雌が卵を温める「抱卵期」の6月に稜線(りょうせん)地帯を踏査した。
雄の目撃数、ふんや羽毛といった生活痕跡の確認状況から、調査をした範囲で生息するつがい数は
63と推計。1981、84年の前回調査では、同じ範囲で推計133で、半減した。
このうち、長野・静岡県境にある聖岳(3、013メートル)から光岳(2、591メートル)にかけての南部では、
20年前の33から24に減少。北部は、山梨県側の北岳(3、193メートル)周辺で33から3に、
間ノ岳(3、189メートル)周辺で20から10に、それぞれ激減していた。
中村教授によると、今回の調査で南部では、ライチョウが食べるクロマメノキ、ハクサンイチゲといった草木が
稜線地帯で食べられていた。一帯でシカの足跡を確認、実際に5、6頭の群れも目撃した。
北部でも、高山植物は残っているものの、シカの足跡や食べた跡を確認した。ニホンザルの姿やふんも
確認された。
県環境保全研究所(長野市)の岸元良輔主任研究員によると、南アふもとの下伊那郡大鹿村などの
低山帯では、シカが下草を食べ尽くしているといい、食草を求めて高山帯に登っている可能性があると
指摘している。
http://www.shinmai.co.jp/news/20060121/KT051227FTI090033000022.htm