海洋生物に微量に含まれ、エイズウイルス(HIV)の増殖抑制効果があるとされる天然
有機化合物「ラメラリンα20―サルフェート」を人工的に合成する方法を、長崎大工学部の
岩尾正倫(まさとも)教授(53)=有機合成化学=らの研究グループが世界で初めて開発
した。近く特許を申請する。岩尾教授は「自然界ではごく微量しか採取できないが、
人工合成なら一定量を確保できる。新薬開発に向けた第一歩」と話している。
ラメラリン系化合物については、米国のスクリプス海洋研究所が一九八五年、貝の一種
「ベッコウタマガイ」から初めて採取。これまでに自然界で約三十種類が確認された。特に、
同研究所が九九年にアラビア海産ホヤから検出した「ラメラリンα20―サルフェート」は、
試験管内でHIVの感染細胞に注入する実験で、ウイルス増殖に不可欠な酵素の一つ
「インテグラーゼ」の働きを阻害して増殖を抑えた、という研究結果が報告され、世界的に
注目されている。
岩尾教授のグループは九七年、ラメラリン系化合物の基本となる物質の合成に初成功。
昨年十月には、医薬品原料の有機化合物「フェニルエチルアミン」の一種を基に、十四段階の
化学合成を経て、ラメラリンα20―サルフェートを生成することに成功した。
この合成法は(1)化学合成の回数が多い割に最終生成量が多い(2)類似した分子構造の
別物質を生成できるなど応用性が高い―などの特徴があるという。
研究グループは今春から、長崎大熱帯医学研究所と共同で効能試験を開始。類似物質と
比較しながら、ウイルスの増殖抑制効果や人体への影響を検証する。
岩尾教授は「この合成法を活用し、より効果が高く人体への悪影響が少ないラメラリン系
化合物を見つけ出したい」と話している。
(後略)
(西日本新聞) - 1月5日2時21分更新
ソース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060105-00000019-nnp-kyu