先端技術産業調査会の西澤潤一会長らは12月1日、
総理官邸で30分にわたって小泉純一郎総理に同調査会でまとめた提言
「科学技術国家戦略策定システムの構築」を説明、
その中で第3期科学技術基本計画の投資目標については
GDP1%を堅持すべきであると主張した。
小泉総理は、秘書官に検討するようその場で指示した。
同調査会の三浦宏一理事長は
「非常に前向きに受け取っていただいたと認識している」と本紙に語った。
先端技術産業調査会は今年9月に設立20周年を迎え、
また次の5カ年の科学技術政策を決める第3期基本計画が検討されていることから、
内田盛也日本学術協力財団理事を委員長とする委員会で提言をまとめた。
提言では、20世紀の石油文明が峠にさしかかり、
地球規模での社会構造がダイナミックに変化していることを踏まえ、
日本は「海洋通商国家」であり「先端技術強国」であるとの基本認識の下、
国家の総力を挙げて、歴史的変化に対応する科学技術基本政策を発揮すべきとしている。
具体的には、
(1)内閣府に科学技術力を基盤とし
要請対応解決型「国家戦略」策定のための機能を設置し、構想型政策を行うこと、
(2)エネルギーと食糧の過半を海洋通商に依存する我が国が持つべき
「包括的総合安全保障」の確立、
(3)省エネ、バイオ資源の構造・物質・細胞・分子レベルの利用による
エネルギー・地球温暖化への対応、
(4)国家戦略に基づく国益追求、健康で安全・安心な文化的生活に重点をおいた、
科学技術投資をGDP1%レベルで行うべき、
(5)ODAとリンクした外交のソフトパワーとして科学技術力を活用すべき、
(6)立法府・行政府に日本全体を包括した科学技術審議システムを早急に組織化すべき。
西澤会長は総理に報告書を説明した後、3つの点を強調した。
研究費配分に様々な問題があり、この改革を進めるためには
総合科学技術会議の位置づけを明確にして取り組まなければならない。
日本では、世界各国の実情に基づいた国家経営戦略が不十分であり、
予算配分にしても戦略的に行われていない。第1期基本計画の17兆8千億円、
第2期の24兆円(実際には21兆6千億円)に続いて、3期ではGDP1%を目指すべきであり、
24兆円を上まわる目標を設けるべき。
小泉総理は、この提言を受けて、秘書官に「よく検討するように」と指示。
また「科学技術といっても様々な派閥があり、意見が違うね。
総合科学技術会議のSABCでも、こっちが立てばあっちが立たずという。困った問題だ」
と科学技術の重要性を認識しつつも、科学コミュニティが持つ問題点を指摘した。
第3期計画の数値目標設定に向けて、動きが活発化する中、三浦理事長は
「国家財政論だけでは国は成り立たない。国家の命運を決める
投資の問題であることを総理に認識して貰ったと思う」と話す。
なお同調査会(URL)では、14日午後2時から東京・大手町の経団連会館で
シンポジウムを開催し、今回の提言の詳細についても発表するという。
http://tech.braina.com/2005/1217/other_20051217_001____.html