独立行政法人物質・材料研究機構、超鉄鋼研究センター、金相グループの坂井 義和主幹研究員、
堀 洋子技術補助員は、世界一の強度と導電率バランスを持つ銅合金の開発に成功した。
銅や銅合金は電気を通す機器の素材として様々な目的に使用されており、機器の軽量、小型、
薄型化が望まれている現状では今までより高強度・高導電率の銅合金の開発が待ち望まれて
いたが、銅合金の強度と導電率は反比例しており、強度を上げると導電率が下がり、導電率を
上げると強度が下がるというジレンマを抱えていた。
今回開発した手法は従来の十分の一という少量のAg(銀)を含有し、残部がCuからなる
合金組成の鋳塊を溶製し、溶体化処理後水焼入れを行い、表面を研削したあとに冷間加工を行い、
その途中で熱処理を施し、さらに冷間加工するという手順であり、通常の強度を意図した手法では
常識外である熱処理を加えることが特徴の一つである。
作製した合金は3つの大きな特徴を持つ。
まず1つめに「銅合金中、最も優れた強度・導電率バランスを有する」ことが挙げられる。
これは、強度では高強度銅合金の代表であるCu−Be合金に匹敵し、導電率は3.5倍という驚異的な
特性を持つということであり、機器の小型、軽量、薄型化に寄与し、電気エネルギーの消費や熱の
発生を抑制することにもつながる。
2つめの特徴は「単純な合金系であり、添加元素を抑えていること」である。
これは、大量生産、リサイクル等トータルな観点からコストパフォーマンスで優れていると言える。
3つめの特徴は「優れた加工性」、中間焼鈍処理無しで超強加工域まで容易に加工できるため、
多様なサイズや形状の部品の製造が可能になる。
本手法により作製した合金は、電線・ケーブル、ロボット駆動用ケーブル、整流子片、モーターコイル、
マグネットコイル、リードワイヤー、リードフレーム、導電性バネ材、超電導線の補強材料など高強度で
且つ高導電性を必要とする多種多様な製品の導体材料として有望であるとともに、それらの電気、
電子機器、機械の軽量、小型、薄型化を可能にするうえ、低コスト化を実現するなど、製品の
付加価値を高められるものと期待される。
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http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press132.html 詳細はこちら(PDFファイル)
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