国内で患者が激減した日本脳炎のウイルスに増殖力の低いタイプが出現している
ことを、神戸大医学部保健学科などの研究グループが突き止めた。
患者減は、予防接種の普及、ウイルスを増やすブタの飼育施設が人家から離れた
ことなどによるものと見られていたが、ウイルス自体の変化が影響した可能性がある。
ただ、研究グループは「再び凶暴化する恐れはあり、予防接種は今後も必要」として
いる。横浜市で開かれている日本ウイルス学会で20日発表された。
研究グループは、近年、日本脳炎ウイルスに自己複製にかかわる遺伝子に傷のあ
るタイプが各地で見つかっていることに注目。2000年に、石川県内のブタから見つ
かった、このタイプのウイルス(石川型)と、傷のない原型ウイルス(野生型)とを使っ
て実験。ハムスター腎臓の培養細胞では、石川型の増殖力は野生型の1万分の1。
蚊の培養細胞では全く増えなかった。マウスに感染させたところ、野生型では6日目
までにすべて死亡したが、石川型では13匹のうち12匹が生き残った。
広島など5県で見つかった、石川型と遺伝子の傷が違うタイプも、毒性は野生型と
あまり変わらなかったが、増殖能力は100分の1だった。
国内の日本脳炎の年間患者数は、1960年代前半まで数千人だったのが、予防
接種が本格的に導入された67年以降激減し、92年からは10人未満。一方で、副
作用の報告が相次いだことから、厚生労働省は今年5月、「日本脳炎の予防接種
は積極的に勧めない」との緊急勧告を出した。
(2005年11月21日11時6分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20051121it02.htm