「ガラス毛細管で三相系水素化反応の実用化に弾み」
=注射針の太さのガラス管で実用的規模の水素化反応が可能に=
JST(理事長 沖村憲樹)は、金属触媒−反応溶液−水素ガスの三相系(固体/液体/気体)
水素化反応をガラス製毛細管(キャピラリー)内で実施することで生産性の大幅な向上を達成した。
ミクロの空間で化学反応を行うマイクロリアクターは、従来のバルク方式に比べて様々な利点を有し、
次世代の反応装置・化学プロセスとして期待されている。例えば、幅が数十から数百マイクロメートル
の流路(マイクロチャネル)では容積あたりの表面積が非常に大きく、接触面積が重要な因子となる
多相系反応に適している。しかしながら、単に液体と気体とを流路内で混合するだけでは、それぞれが
塊状となり広い接触面積を維持できない。また、ミクロサイズの流路に金属触媒を固定する技術も
確立されていなかった。
本プロジェクトでは昨年、独自に開発したナノサイズ金属クラスターの製造技術を応用することで
パラジウム触媒をガラスチップ上のマイクロチャネル内に固定し、効率的な三相系水素化反応を
実現した。しかしながら、本手法は単位時間当たりの生産量が少ないため、実用化には高価な
マイクロチップの積層化と積層化技術の開発が必要であった。
本研究では、化学工業分野で重要な三相系水素化反応における反応場として、板状のガラス
マイクロチップに換えて管状のガラス製キャピラリーを用いて検討を行った。その結果、短い反応時間、
高収率、高純度などのマイクロチャネルの利点を保ちつつ、生産性が大幅に向上することを見出した。
ガラス製キャピラリーは、マイクロチップと比較して非常に安価、束ねるだけで積層化が容易、
流路体積/支持体積が高いことから装置の小型化が可能などの利点を有する。
本成果は、昨年開発したガラスチップ上での三相系水素化反応における実用化への課題を解決
するものであり、マイクロ反応装置が並ぶ化学プラントの実現に大きく近づいたと言える。
本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATOタイプ)「小林高機能性
反応場プロジェクト(研究総括 小林 修)」によって得られたもので、ドイツの科学雑誌[Advanced
Synthesis & Catalysis]のウェブサイト上にオンライン出版(11月15日:日本時間)されるとともに、
12月号に掲載される。
引用元:科学技術振興機構プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/info/info227/index.html Triphase Hydrogenation Reactions Utilizing Palladium-Immobilized Capillary Column Reactors
and a Demonstration of Suitability for Large Scale Synthesis (p NA)
Published Online: 11 Nov 2005
DOI: 10.1002/adsc.200505265
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/112141321/ABSTRACT