北海道大学創成科学研究機構の武笠幸一教授の研究グループは、インフルエンザ
などの人獣共通感染症を監視・予防する対策向けバイオセンサー検出キットのプロト
タイプ開発にメドをつけた。同研究成果は、創成機構が進める戦略重点プロジェクトの
一つである「人獣共通感染症の診断・治療法の開発」プロジェクトから得られたもの。
武笠教授の研究グループは、インフルエンザウイルスなどの人獣共通感染症の
ウイルスを高感度で簡単に検出するバイオセンサーとして、シリコン(ケイ素)基板の
裏側に抗体反応をする認識分子を貼り付けるバイオセンサーのプロトタイプを作製した。
このバイオセンサーがインフルエンザウイルスなどを好感度で測定時間10分以下と
迅速に検出することを確認した。
シリコン基板表面は実際にはシリカ(SiO2、酸化シリコン)になっているので、
シリカカップリング材などを用いて認識分子を裏側に貼り付ける。認識分子を貼り付けた
逆側のシリコン基板の表側に単層カーボンナノチューブなどを基板表面に平行に貼り
付ける。シリコン基板の表側に金の正極と負極の電極を二つ付け、この正極と負極間に
カーボンナノチューブを橋渡しする。
この構造では、裏側の認識分子に例えばインフルエンザウイルスの表面タンパク質が
付いて抗体反応すると、カーボンナノチューブを流れる電流が数マイクロアンペア単位
で変化し、ウイルスを数10個から数1000個で検出できる実験結果を得た。従来は、
ウイルス抗体を特異な抗体で検出するELISA法という検出法が主流だが、ELISA法は
ウイルスを数万個単位で検出し、かつ測定時間も1時間以上かかる。このことから、
開発したバイオセンサーの方が高性能で迅速であることが分かる。
開発したバイオセンサーは小型・軽量化が可能なので、携帯用の検出キットに仕上げ、
世界各地で検査する態勢をとる。この検査結果などの情報をWebサイトによるネット
ワークによって情報交換し、世界的な常時監視体制を築く計画。検出キットは多検体を
同時処理したり1検体で多項目を検査できるなどの機能開発を目指す。同バイオ
センサーの検出キットを平成17年度〜同18年度に実際に事業化するかを検討する。
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/flash_rss/402428