◇自分の声、頭に響く
自分の声が頭に響いたり、呼吸の音が聞こえたりすることはありませんか?
――もしかすると「耳管開放症」という耳の病気の可能性がある。患者は少ないと考え
られてきたが、最近ダイエットなどによる急な体重減少が原因となる症例が目立つとい
う。専門医に聞いた。 【藤原尚美】
大阪市港区の会社員、石川幸一さん(39)=仮名=は3年前、処方された降圧剤が
体に合わず、心拍数や血圧が測定不能なほど上昇し、生死の境をさまよった。2カ月
の闘病期間で体重は5キロ減った。その後、石川さんは耳の変調に気づいた。
話すとき自分の声が大きく響き、どのぐらいの音量で話しているのか分からない。自
分が呼吸する音も聞こえる。訪れた大学病院で「耳管開放症」と診断を受けた。
東北大大学院耳鼻咽喉頭頸(いんこうとうけい)部外科の小林俊光教授によると、
「耳管」は、耳の鼓膜の内側から鼻咽腔(くう)までの器官。最も狭いところは1ミリ、長
さは約3・5センチの小ささだ。
通常は閉じているが、唾液(だえき)を飲み込んだ時に0・2秒ほど開いて、鼓膜の内
と外の圧力を同一に保つ。例えば、飛行機が上昇・下降する時に、耳が詰まったよう
に感じる時がある。唾液を飲み込むと解消するのは、耳管が開き、耳の内と外の圧力
を同じにするからだ。
ところが「耳管」が開きっ放しだと、鼻咽腔と鼓膜の間が常に「開通」した状態になり、
石川さんのような症状が出る。原因として、耳の疾患経験や低血圧などのほか、短期
間での急激な体重減少が注目されている。あおむけに寝たり前屈したりすると、症状
が一瞬消えるのが特徴だ。
症例が少ないために原因が分からず、病院を転々としたり、心の治療が必要と誤診
される人もいる。
小林教授らが04年、同大学病院の職場検診(21〜67歳)で調べたところ、およそ
20人に1人が「疑いあり」と診断された。
同大病院外来が01〜04年、耳管開放症の患者135人を対象に行った調査では、
およそ4割の55人が、2カ月以内に3キロ以上の体重減少を経験していたことが分か
った。
耳管の周囲には「オストマン」という脂肪体があり、耳管を押すようにして、開閉に重
要な役目を果たしている。小林教授は「ダイエットなどで急にやせると、この脂肪体ま
でやせてしまい、それが耳管開放症の発症につながっているのではないか」とみる。
20代の女性で「ダイエットをやめたら耳の症状が軽くなった」というケースがあるという。
程度によるが、開放した耳管を狭くする処置や手術による治療も有効とされる。小林
教授は「耳管開放症の半数近くは、急激な体重減少が誘因。耳の機能からみても、無
理なダイエットは危険」と警告する。
毎日新聞 2005年10月4日 東京朝刊
ソース:毎日
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http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20051004ddm013100040000c.html】