【素材】ナノ化粧品、独自試験で安全性の検証へ=粧工連

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超微粒子を売りにしたファンデーションなどの「ナノ化粧品」について、
日本化粧品工業連合会(粧工連)は、独自試験などでその安全性を検証していくことを決めた。

ナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの超微粒子(ナノ粒子)が、吸入などで体内の器官に
入り込み健康に悪影響を与える可能性を示す研究報告が出てきたため。
粧工連は現時点では安全性に問題ないとの立場だが、化粧品は薬事法で水銀などの
配合禁止成分が定められているものの、含有成分の大きさや形状までは規制されていない。

ナノサイズの物質を扱うナノテクは、次世代を担う新技術として期待されている。
化粧品分野ではナノテクを生かした超微粒子を含む製品が80年代後半から登場した。
同じ成分でも、粒子がより細かい方が、透明感の高いファンデーションや
紫外線予防効果の高い日焼け止めができるという。

粧工連が今年2月、化粧品会社や原料メーカーなど会員企業にアンケートした結果では、
回答した478社の4分の1に当たる122社が「ナノ粒子を使っている」と答えた。
成分は、化粧品によく使われる酸化チタンと酸化亜鉛がほとんどだったが、粒子の大きさは
20〜50ナノメートル未満が約半数を占め、20ナノ未満も約3割で、従来製品の10分の1程度だった。

ところが、ナノ粒子の一種でサッカーボール状の炭素分子フラーレンを入れた水で飼育した魚の
脳細胞が傷付く可能性がある。

ラットにナノ粒子を吸わせると、神経を経由して脳に入り込んだーーなどの報告が昨年、米国で相次いだ。

物質がナノサイズになると、反応性や性質が変わるとの指摘もある。
英国王立協会は同7月、同じ成分でもナノサイズの物質は、
新規物質として安全性を検討すべきだとの報告書をまとめた。

酸化チタンなどのナノ粒子については、皮膚の表面にとどまるとする海外の研究結果もあるが、
粧工連は皮膚を透過するかどうかを動物の皮膚などで調べる予定だ。

安全性部会の畠山義朗さんは「データを積み上げ、業界全体で安全性を保証していく必要がある」と話している。

昭和大の吉田武美教授(毒物学)の話 経済成長の時代は安全性が二の次だった。そのツケは後でやってくる。
そうならないようナノ粒子の安全性をきちんと検証すべきだ。

ナノテクノロジーで扱うナノ粒子は、電子部品や化粧品の新素材として注目が集まっているが、
安全性の評価は遅れていた。産業技術総合研究所の阿多誠文・シニアリサーチャーは「ナノ材料を
吸い込むことによる影響や慢性的な毒性試験は、技術的にも難しい。世界的にもデータが不足している」と指摘する。

日本化粧品工業連合会(粧工連)のナノ粒子製造会社への聞き取り調査でも、ナノ粒子を吸い込んだ時の影響は
評価していないことが分かった。大手化粧品会社も「ナノ化粧品の刺激性や毒性などの安全確認は
当然やっているが、ナノ粒子が皮膚を透過するかどうかまでは調べていない」と話す。

物質サイズが極微小になると、同じ成分でも、反応性が高まるなどその特性が変わるとされる。
こうした性質が新素材としての可能性を開く一方、人体に予想外の影響を与える恐れも生む。
だからこそ英国王立協会は「ナノ粒子を新規物質として扱うべきだ」と警告した。海外では、炭素原子でできた
カーボン・ナノチューブの粒子が、アスベストと同じような害を人体に与える可能性を指摘するリポートもある。

国内ではこれまで、体系的な調査や研究はなかったが、厚生労働省や環境省など4省は7月、ナノ粒子の安全性評価や
リスク管理の方法に関する合同研究を始めた。今年度中に何らかの提言をまとめることになっている。

調査研究の代表者を務める阿多さんは「産業界ではナノ粒子の実用化が一層進む。
健康や環境への影響の問題にどう対応していくかを早急に示す必要がある」と話す。

粧工連の検証は「消費者の不安解消」が主目的だが、幅広い産業でナノテクが注目を集める中、今後はナノ粒子の
総合的な安全性研究が不可欠だ。

ソース:
ナノ化粧品 独自試験で安全性の検証へ 粧工連 - (毎日新聞)
ttp://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050920k0000e040067000c.html