理化学研究所植物科学研究センターの出村拓・チームリーダーらは、東京大学の福田裕穂・教授、
神戸大学の三村徹郎・教授と共同で、シロイヌナズナとポプラを使って、樹木の骨格や生命の維持に
大きく関与している木質細胞の分化を制御するマスター遺伝子を世界で初めて発見した。
この遺伝子を導入すれば、表皮の細胞を強引に木質細胞に分化させることができるという。
米国雑誌GENES&DEVELOPMENTの8月15日号に掲載された。
地球上のバイオマスの大部分は森林由来の木質バイオマスであり、
これが地球上の二酸化炭素の多くを固定している。現在、無秩序な森林破壊によって、
年間1000万ヘクタール(0.3%)ずつ、森林が減少しており、これに伴って二酸化炭素が放出され、
地球の温暖化にもつながっている。
その中から、遺伝子発現に関わると予想される一群のNACドメインタンパク質に着目し、
シロイヌナズナとポプラを使って、それら遺伝子の働きについて詳細に解析した結果、
VND6とVND7と名付けられた、互いに類似した二つのNACドメインタンパク質の遺伝子が、
本来は管状要素に分化しない表皮細胞などを管状要素へ分化させる能力を持つことを発見した。
また、これらの遺伝子の働きを抑えると正常な管状要素は形成されない。さらに、
シロイヌナズナとポプラという異なる植物種で管状要素の分化を誘導できることから、
これらが木質形成のマスター遺伝子であることが明らかになった。
植物では、細胞分化の運命を直接支配するようなマスター遺伝子の存在はほとんど知られていない。
福田教授によると「植物は環境の変化にあわせて、自らを変えることで生き延びてきたため、
変化を決定づけてしまうマスター遺伝子自体が少ないのではないか」という。
http://tech.braina.com/2005/0915/bio_20050915_001____.html