住民のアスベスト(石綿)被害を巡る緊急シンポジウム「石綿と環境曝露(ばくろ)」が28日、
東京都千代田区で開かれた。村山武彦・早稲田大教授(リスク管理論)は、
一般環境や建物解体現場周辺の石綿濃度基準がないという現行法の欠陥を指摘し、
十分な安全性が保てない可能性があるとして、早急に濃度基準を設けるよう提言した。
シンポは民間団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」の主催。
濃度規制は、89年の大気汚染防止法改正によって、石綿関連工場と隣接地の敷地境界で
「空気1リットル当たり10繊維」と定められた。工場直近の濃度を規制しただけで、
一般環境にまで石綿が達する可能性があるのに一般環境の基準はないまま。
学識者による国の中央環境審議会は96年、生涯暴露した場合10万人に1人が死亡する
リスクレベル「実質安全容量」(VSD)という考え方を示し、危険な物質の環境基準を検討する
必要があると答申した。ところが、石綿は「大気汚染防止法で規制済み」などの理由で対象外とされた。
シンポで村山教授はVSDの考え方に基づいて、石綿の一般環境基準を当面、
敷地境界規制の100分の1にあたる「空気1リットル当たり0.1繊維」にすべきだとの見解を示した。
さらに、工場以外の各地の一般環境で測定した各種データを分析。
一般環境の濃度の現状は「同約0.1繊維」でVSDとほぼ同じか、やや高いレベルと報告した。
一方、約10年前の一般環境濃度は「同約1繊維」で、VSDの約10倍の危険度だったとした。
村山教授は「中央環境審議会の96年答申の立場から、(国は)現行基準が妥当かどうか検討すべきだった。
石綿を使った建物の解体もピークを迎える。解体建物の周辺を含めて、基準を設定すべきだ」と話している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20050829k0000m040081000c.html