【環境/生態】栄養分と汚染物質双方を北極沿岸の生態系に運ぶ海鳥、大気輸送の影響を上回る？

海鳥による北極地域への汚染物質運搬

　栄養分と汚染物質双方を北極沿岸の生態系に運んでいるのは、気流ではなく、主として
海鳥であるという。

　カナダのJules Blaisらは、カナダ北極地方にあるデボン島のヴェラ岬の崖下にある沼群を
調査した。この崖は北大西洋一帯に生息する中型のウミツバメの仲間、フルマカモメの巨大
コロニーとなっている。

　沼の堆積物ではDDT、水銀、およびヘキサクロロベンゼン（以前は殺虫剤に使用されていた）
の濃度が周辺の他の場所と比較して高かった。グアノ（鳥糞石）は、食物連鎖中で既にこれら
化学物質の濃縮が起こっている海洋動物（未消化の魚、腐肉、イカなど）で構成されていた。
このように、海鳥がもたらす「生物ポンプ」は極めて重要な栄養素を遠く離れた環境に運ぶ
一方で、今や産業汚染物質も一緒に運搬している。

　これまで北極地域の汚染物質は主に長距離を移動する大気によってもたらされると考えられ
てきた。今回の調査結果から、一部の沿岸地域では、生物による輸送が及ぼす影響が大気に
よる輸送の影響を上回っていることが示唆された。

　汚染物質の多くは寒帯気候で蒸留濃縮され、続いて魚、ベルーガイルカ、アザラシなど上位
の海洋捕食者の体内で濃縮される。その結果、北方に居住する先住民族は世界で最も高濃度
の水銀やPCBなどの化学物質に曝されていることが明らかになった。

Science Highlight 2004年 7月 15日（金）
http://www.sciencemag.jp/highlights/20050715/index.html#1

Arctic Seabirds Transport Marine-Derived Contaminants
Jules M. Blais, Lynda E. Kimpe, Dominique McMahon, Bronwyn E. Keatley, Mark L. Mallory, Marianne S. V. Douglas, and John P. Smol
Science 15 July 2005: 445.
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/309/5733/445

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