大腸がんの発症について研究している札医大医学部第一内科の豊田実講師らのグループが、
RASSF2という遺伝子が大腸がんの進行を抑える働きを持つことを発見し、二日までに
米国消化器病学会の専門誌(電子版)で公表した。大腸がんになると、この抑制遺伝子の機能
が消失している場合のあることが分かり、機能回復を促す新薬の開発が進めば、従来より副作
用が少ない治療法の開発が期待できるという。
細胞が増殖する場合、スイッチの役割を果たす「K−ras」という遺伝子がシグナルを送り、
増殖を促進するタンパク質に働きかける。大腸がんは、K−rasのスイッチが入ったままシグ
ナルを出し続け、細胞増殖が止まらない状態だ。
研究グループは、すでに解析された人間の全遺伝情報「ヒトゲノム」の中から、K−rasの
働きを制御する遺伝子を探していて、RASSF2の存在に着目。RASSF2は、K−ras
が活性化するとくっついてシグナルを出すのをやめさせ、増殖にブレーキをかけたり、細胞死を
進めたりしていることを突き止めた。同時に、大腸がんの約半分で、遺伝子の機能を消失させる
「メチル化」が起き、RASSF2が働いていないことも判明した。
すでに米国では、メチル化した遺伝子を正常な状態に戻す新薬の研究が進んでいる。新薬の
開発が進めば、RASSF2の機能を回復し、大腸がんの進行を食い止めることが可能になる
という。
新薬は、細胞そのものを死滅させる抗がん剤や放射線療法などに比べ、副作用が少ないとみら
れている。
研究グループの同大医学部第一内科の秋野公臣医師(33)は「今回の研究成果が、患者の
負担を減らす新薬の開発につながってほしい。さらに研究が進めば、大腸がんだけでなく、
他のがんにも応用できる可能性がある」と話している。
札医大と米ジョンズホプキンス大の共同研究グループは昨年、大腸がんの初期段階でも、同じ
ように細胞増殖を抑制する遺伝子の存在と、その機能消失の関係を解明している。
引用元:北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20050403&j=0045&k=200504039675