放射線医学総合研究所フロンティア研究センター放射線感受性遺伝子プロジェクト主任研究員
伴貞幸らは、運動性および放射線感受性の異なる娘細胞を産生するがん細胞株を見つけた。
一般に、培養されたがん細胞は自己とほぼ同じ性質を持つ二つの娘細胞に分裂することを
繰り返す、いわゆる'自己複製'をしながら無限に増えていくと考えられている。伴らは、
数多くのヒトがん由来細胞の放射線感受性を評価する研究のなかで、1つの食道がん由来細胞が、
コロニー形態、遺伝子発現、放射線感受性が親細胞とは明らかに異なった性質の娘細胞を産生
すること、いわゆる「がん細胞の分化」を示すことを見出した。この細胞は、'自己複製能'
に加えて'分化能'という幹細胞に特有の二つの特徴を持っていることから「がん幹細胞」
であることが示唆された。細胞の分化度を定量する有効な方法はまだ報告されていないが、
本細胞ではコロニー形態でその分化度を定量化することができることから、がん幹細胞研究の
有力なモデルとなることが期待される。
がん幹細胞の発見は、部位によって異なるがんの発生メカニズムを解明するうえで重要で
あるが、食道がんについてはこれまで未発見であったため、治療法を見出すための研究に
おいて大きな課題であった。分化度を定量化できる今回の「食道がん由来がん幹細胞」発見は、
難治性の高い食道がんの発生メカニズムを知り有効な治療法を確立するために、極めて貴重な
成果である。
引用元:放射線医学総合研究所プレスリリース
http://www.nirs.go.jp/newinfo/press/2004/02_21.htm