独立行政法人科学技術振興機構と独立行政法人理化学研究所は、細胞内でタンパク質合成を行う
小胞体からタンパク質が運ばれる過程を人工的に再現し、タンパク質が正確に運ばれる分子メカニズムを
解明した。細胞内には、ゴルジ体、リソソームなどの小器官が存在し、それぞれが役割を分担している。
小胞体は各小器官の部品となるタンパク質や、細胞の外に分泌されるタンパク質を合成する小器官であり、
つくられたタンパク質は、小さな膜の袋(輸送小胞)に取り込まれて運ばれる。このときSar1と呼ばれる
タンパク質が、GTP(グアノシン三リン酸)とよばれるエネルギーを消費しながら輸送小胞の形成を
制御していることは知られていたものの、この分子メカニズムは解明されていなかった。
今回、酵母細胞から抽出したタンパク質輸送に必要な成分とGTPを、人工的に再現した小胞体に加える
ことにより、輸送小胞にタンパク質が取り込まれる過程を試験管内で人工的に再現する方法を開発して
解析を行った。その結果、輸送小胞にタンパク質が取り込まれる際に、Sar1はGTPのエネルギーを使って、
異常なタンパク質を輸送小胞から排除する「監視役」を担っていることが解った。小胞体からのタンパク
質輸送メカニズムは、酵母からヒトに至るまでほぼ同じと考えられていることから、今回の成果は、
小胞体からのタンパク質輸送の障害が原因とされている疾患の発症メカニズムや治療法の確立に
大きく貢献できると考えられる。また、この研究で開発した、輸送小胞を人工的に作らせる技術を
応用することによって、細胞内の特定の場所に薬物を送達することが可能になると考えられる。
以下、詳細はソースにて
引用元:理化学研究所プレスリリース
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2005/050124_2/index.html Dissection of COPII subunit-cargo assembly and disassembly kinetics during Sar1p-GTP hydrolysis
Nature Structural & Molecular Biology Published online: ; | doi:10.1038/nsmb893
http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nsmb/journal/vaop/ncurrent/abs/nsmb893.html