(東京大学生産技術研究所の平本俊郎教授らのグループは、単電子トランジスタを組み合
わせた集積回路を作成し、このクーロンブロッケード現象を利用したアナログパターン
マッチングに成功し、米サンフランシスコで開催中のIEDM2004で発表された。)
今回の研究では、まず2つの単電子トランジスタからなる室温動作の電流スイッチ回路が
示された。ドレイン電極を共有し、2つのソース電極を持ち、ゲート電極を共有する回路が
あり、回路を構成する単電子トランジスタはそれぞれスレッショルド電圧としてLowと
Highを持っている。これに対して方形波のゲート電圧を付加する。すると、低いゲート電
圧を与えた時は一方の単電子トランジスタがオンになり、高いゲート電圧を与えた時はも
う一方の単電子トランジスタがオンになるという形で、それぞれのソース電極が交互に電
流を流すスイッチの動作をすることが示された。この動作は、単電子トランジスタがス
レッショルド電圧の前後でクーロンブロッケード現象による電流ピークを持つことに依存
している。
次に、単電子トランジスタの集積回路を使って、アナログパターンマッチングの動作検
証が行われた。
(中略、アナログパターンマッチングについては関連情報を参照してください。)
検証された回路は、テンプレートベクトルと入力ベクトルの間の距離をアナログ計算で
出力する集積回路である。この目的のため、ナノクリスタルによるフローティングゲート
を備えた狭チャネルトランジスタを単電子トランジスタに直列に接続し、スレッショルド
電圧およびそのピーク電流値をコントロールできるようにした。
そして、3つの上記の単電子トランジスタセルを用意し、それぞれに3原色RGBのうちの1
色を割り当てる。つまり、ベクトルにおいてトランジスタセルが座標となり、その値がス
レッショルド電圧で示されることになる。
例題として"オレンジ色"を意味するテンプレートベクトルを、それぞれの素子にスレッ
ショルド電圧値として記憶させる。この記憶は、コントロールゲートのナノクリスタルに
電荷を書き込むことで実現される。次に、テンプレートベクトルを記憶した素子に対し
て、比較用の色ベクトル値をゲート電圧として入力する。すると、単電子トランジスタの
持つクーロンブロッケード現象のため、記憶されたスレッショルド電圧の前後で出力電流
値がピークを持つため、入力された電圧が記憶されたスレッショルド電圧に近いほど出力
電流が大きく、値が離れるほど小さくなっていく。このため、この3素子の合算出力電流
は、テンプレートベクトルと参照ベクトルの距離を示していることになる。
実験では、オレンジ色を意味するテンプレートベクトルに対して、様々な色の参照ベク
トルを入力し、その出力値を調べた結果、同じオレンジ色を参照した時が最も出力電流が
高い結果となり、またその他の結果も、2つのベクトルの間のManhattan Distanceと良い近
似を示し、単電子トランジスタを用いて、効果的にアナログパターンマッチングを行うこ
とができることを示した。この方法も、単電子トランジスタの持つクーロンブロッケード
現象を活かした量子効果トランジスタならではのものである。(略)
記事全文はこちらです。
Mainichi Communications PCWeb 2004/12/14 − 古林高
http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2004/12/14/iedm2/ 8.1 Room-Temperature Demonstration of Integrated Silicon Single-Electron
Transistor Circuits for Current Switching and Analog Pattern Matching
M. Saitoh, H. Harata, and T. Hiramoto, University of Tokyo, Tokyo, Japan
http://www.his.com/~iedm/techprogram/sessions/s8.html アナログパターンマッチングの動作原理についてはこちらが詳しいです。
【インタビュー】「連想プロセッサ」の開発 - 賢いコンピュータを目指して
http://pcweb.mycom.co.jp/articles/2005/01/01/brainlsi/ 室温単電子トランジスタ集積回路についてはこちら
【IT】単電子トランジスタ集積回路の室温動作に成功
http://news16.2ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1104943009/l50