細胞 : Seladin-1がもつ意外な制御作用
癌の発生に対する哺乳類細胞の防御機構の構成因子が、新たに見つかった。このSeladin-1
という遺伝子は、これまではアルツハイマー病やコレステロール代謝と関係があるとされ
ていたので、意外な発見であるといえる。
癌遺伝子の発現は癌細胞の発生に結びつくことがあるが、このような脅威にさらされる
と、細胞の老化プログラムが作動し、これが腫瘍形成と闘う武器となると考えられている。
K Galaktionovたちは、遺伝子スクリーニングを行って、Seladin-1がRasタンパク質の引
き起こす老化に関与することを発見した。ラットやヒトの線維芽細胞でSeladin-1をノック
アウトすると、Rasが引き起こすはずの老化が回避され、Ras活性が制御をうけなくなるた
めに細胞が癌化する。Seladin-1のこの制御作用の核心となるのは、発癌性ストレスや酸化
ストレスによって起こるSeladin-1と癌抑制タンパク質p53との相互作用である。
Nature Japan Highlight December 02, 2004
http://natureasia.com/japan/nature/updates/index.php?id=860&issue=7017 細胞:Seladin-1による発癌ストレスと酸化ストレスに対する細胞応答の調節
Chaowei Wu, Irene Miloslavskaya, Silvia Demontis, Roberta Maestro & Konstantin Galaktionov
Nature 432, 640 - 645 (02 December 2004); doi:10.1038/nature03173
http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nature/journal/v432/n7017/abs/nature03173_fs.html