胚性幹細胞のシグナルがマウス胎児を救う
心臓に致命的な障害を発現する傾向のあるマウス胎児に胚性幹細胞を注入したところ、
幹細胞から分泌されたシグナル分子が心臓を疾患から守ったという。さらに、受胎前のメ
スマウスに同じ胚性幹細胞を注入したところ、メスが生む仔の遺伝性心疾患を一部治療す
ることができ、同時に胎児の死亡を防ぐことができた。Diego Fraidenraichらによると、
胚性幹細胞から分泌される長距離、あるいは短距離シグナル分子(それぞれIGF1、WNT5a)
が欠陥を修正し、胎児を救うという。
幹細胞を成熟したメスに注入すると、幹細胞から分泌されたIGF1は胎盤を超えて胎児に
届くようであった(WNT5aは届かない)。また、初期胚に幹細胞を直接注入した場合には、
いずれのシグナル分子も欠陥のある心臓組織まで到達することができた。
関連する「Perspective」の著者は、胚性幹細胞から分泌される要素が、将来、成人の心
疾患治療に使われるようになる可能性があると記している。
Science Highlight 2004年 10 月 8日(金)
http://sciencemag.jp/highlights/highlight.html#3 Rescue of Cardiac Defects in Id Knockout Embryos by Injection of Embryonic Stem Cells
Diego Fraidenraich, Elizabeth Stillwell, Elizabeth Romero, David Wilkes, Katia Manova,
Craig T. Basson, and Robert Benezra
Science 8 October 2004: 247-252.
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/306/5694/247 DEVELOPMENT:ES Cells to the Rescue
Kenneth R. Chien, Alessandra Moretti, and Karl-Ludwig Laugwitz
Science 8 October 2004: 239-240.
http://www.sciencemag.org/cgi/content/summary/306/5694/239 幹細胞医療開発関連ニュースは
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