ほこりの中に含まれる細菌由来物質、エンドトキシン(内毒素)が高濃度の家庭に住む子供たちは、
一歳の誕生日を迎えるまでは湿疹(多分アトピー性皮膚炎のことだけど、以下湿疹で)を発症する
リスクがより少なくなるようだ、と、ボストン子供病院で小児アレルギーと免疫学を研究し、ハーバード
大学医学部で小児科学を教えるWanda Phipatanakul助教授のグループが発表した。
この研究は最近の衛生仮説−初期の感染性、炎症性物質への暴露が、赤ん坊の免疫系に変化をもたら
し、後々アレルギーを発症する危険性を減らすのではないかという仮説−を支持する研究をさらに
裏付けるものとなった。これまでさまざまな研究者がエンドトキシンとアレルギーの関係に注目して
きたが、今回の研究は乳幼児にとってもっとも一般的なアレルギー疾患の一つである湿疹に対する
エンドトキシン暴露の影響を調べた米国で最初の研究となる。
これはボストンを拠点に進められている家庭内アレルゲンと喘息に関する研究の一部で、ボストン
市内に住む500人の生後2〜3ヶ月の乳幼児を対象に追跡調査したもの。彼女らは、400件の家から
リビングルームのほこりのサンプルを集め、細菌の細胞壁の構成物質であるエンドトキシン濃度の
分析を行った。この分析対象になった赤ん坊の一方の親はアレルギーか喘息を患っている。
この結果、エンドトキシン濃度が高いほど、赤ん坊は生後1年間、湿疹と診断される事例が少ない
ようだということがわかった。エンドトキシン濃度を4段階に分類したとき、1段階ずつ濃度が上がる
ごとに湿疹および類縁のアレルギー性疾患にかかる危険性は25%ずつ減少した。また、犬を飼っている
家庭の乳幼児の罹患可能性も低かったが、エンドトキシン暴露との調整後で比較すると関係性は弱かった。
乳幼児が湿疹になるリスクは、父親も湿疹の既往歴がある場合や母親が少なくとも1種類のアレルゲンに
対して感作性の場合に増加した。
湿疹の発症件数は喘息や他のアレルギー疾患と同様、第二次世界大戦後、先進国で2〜3倍に増加した。
衛生仮説によれば、現代の清潔でばい菌の少ない環境は、赤ん坊の免疫が細菌に対する抵抗性を発達させる
機会を奪い、その結果としてアレルギー反応の矛先を危険性のない物質に向けてしまう可能性があると
している。この、まだまだ議論の渦中にある説を支持する人たちは、農園でペットのいる環境で大家族の
中で育ったり、乳幼児の早い時期から保育所に預けられた子供はアレルギーや喘息にかかる危険性が低い、
と指摘する。
Phipatanakul自身は親達にペットを飼ったり、家の掃除をやめたり、子供を保育園に預けたり、
あるいは、湿疹にかからないように保護したりすることを特に奨めているわけではない。
「環境中に湿疹と関連する重要な何かがあることはわかっているのですが、どのようにしたらよいのか
推奨できるレベルになるまでにはもっともっと研究を続ける必要があります。実際、たくさんの研究が
エンドトキシン暴露と喘息患者の喘鳴や気道の炎症との関連性を示してきてはいるのですが、アレルギーの
メカニズムはとても複雑で、エンドトキシンが実際免疫系にどのように関わっているのかまだはっきりして
いないのです。」と彼女は付け加えた。
Bacterial Toxin May Protect Infants From Asthma;
New Findings Support The Controversial 'Hygiene Hypothesis'
http://www.sciencedaily.com/releases/2004/07/040706075843.htm