電解液を用いないリチウム二次電池の実現に向けた高性能固体高分子電解質を開発
リチウムイオンの伝導度が従来の3倍に向上
��日立製作所は、このたび、日本油脂株式会社と共同でリチウム二次電池用として、高いリチウムイオン
伝導度を持つ新しい固体高分子電解質を開発しました。開発した固体高分子電解質は、室温(20℃)で、
従来の3倍以上の実効的なリチウムイオン伝導度を達成しており、電解液を使用しない安全な固体電解質
リチウム二次電池の実用化に近づくとともに、今後の新しい用途の開拓が期待されます。�
��リチウム二次電池は様々な二次電池の中で、最も高いエネルギー密度・高い出力を持った二次電池で、
その特長を生かして携帯電話、ノートパソコンなどの携帯機器等に適用されており、電気自動車等への
適用の検討も進んでいます。しかし、リチウム二次電池は、電解液として有機溶媒を用いているため、
短絡、過充電時など、濫用時の安全対策が不可欠でした。そこで、近年では電池の安全性を向上させるため、
有機溶媒系電解液に代わり、イオン伝導性ポリマーやセラミックスを用いた固体高分子電解質の開発が
活発に進められています。
��これまで、最高のイオン伝導度を持つ固体高分子電解質材料として報告されてポリエチレンオキシド系ポリ
マーの場合、陰イオンのイオン伝導が起こるため、実効的なリチウムイオンの伝導度は低い値にとどまって
いました。そこで、日立はカーボネート系ポリマーを用いることにより、電解質塩の配合量を増加させ、
実効的なリチウムイオン伝導性を向上させる材料を開発してきました。�
��今回開発した固体高分子電解質は、ポリエチレングリコールホウ酸エステル化合物です。固体高分子
電解質は、陰イオンを固定する機能を持ったホウ素原子を、ポリエチレンオキシド系ポリマーの運動を
阻害しないホウ酸エステル化合物の形で導入した構造です。日立は日本油脂のアルキレンオキシド系材料に
関する知見と合成技術を導入することによって、この構造を分子設計し、最適な合成方法を確立しました。
��その結果、この固体高分子電解質はカーボネート系ポリマーに対し、約1/10の電解質塩添加量で、実効
的なリチウムイオン伝導度を維持することができました。また、ポリエチレンオキシド系ポリマーに対しては、
3倍以上の実効的なリチウムイオン伝導度を実証するとともに、この固体高分子電解質を用いたモデル電池
評価の結果、室温で作動可能であることを確認しました。(中略)
��なお、本技術は6月28日から、なら100年会館(奈良県奈良市)にて開催されるInternational Meeting on
Lithium Batteries(Electrochemical Society)にて発表しています。
日立製作所ニュースリリース 2004年6月29日
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2004/06/0629b.html