■マラリア:世界初の予防ワクチン 阪大が年内に臨床試験
蚊が媒介する伝染病・マラリアの一種「熱帯熱マラリア」を予防するワクチンの開発に取り組む
堀井俊宏・大阪大微生物病研究所教授(分子原虫学)のグループが、今年11月にも臨床試験を
国内で行うことが決まった。WHO(世界保健機関)の専門家が来日し、共同で取り組む。
マラリアは発症後の治療法はあるが、発症を予防するためのワクチンの開発に成功した例はなく、
2010年の実用化を目指す。
マラリア撲滅が活動の柱でもあるWHOの専門家が今年3月、堀井教授へ共同研究を申し入れた。
堀井教授らは、マラリアに感染した赤血球内に現れるたんぱく質「SERA」に着目。SERAを攻撃する
抗体が、マラリアの原虫を殺すことを確認し、昨年9月からチンパンジーなどの動物で毒性試験を実施
安全性を確認した。
臨床試験は、WHO本部(スイス・ジュネーブ)から新薬開発の専門家4人が来日し、11月に国内で
45人に対してワクチンを投与、効果を確認する計画。来年5月にマラリア流行地のウガンダで、
06年1月にインドネシアなどでも臨床試験を行う。順調に進めば、08年ごろ、WHOが世界規模で
最終の臨床試験に取り組む。
堀井教授は「WHOの専門家との協力で、海外での臨床試験もスムーズに進む。マラリアで苦しむ
多くの人を救うためにも、実用化に向け、着実に進めたい」と話している。
マラリアは「世界3大感染症」の一つ。熱帯を中心に年間約1億人以上が発症。
世界で年間100万人以上が死亡するとされる。
■「実用化に向け前進」
綿矢有佑・岡山大大学院教授(医療薬学)の話 ヒトへの臨床試験の決定で、実用化に向け確実
に前進したといえる。世界3大感染症の中でも、マラリアは貧しい地域で流行することから、
研究が遅れていた。感染者が少ない日本の研究者が難しい開発をリードしていることは大変意義深い。
【マラリア】蚊の一種であるハマダラカを媒介して、人に感染する伝染病。熱帯や亜熱帯にみられ、
吸血された際、ハマダラカの持つマラリア原虫が血液を経由して体内に入り、感染する。高熱や頭痛、
吐き気などの症状が出る。原虫によって「三日熱」「卵形」など、いくつかの種類に分けられ、中でも症状が
重いのは「熱帯熱マラリア」。40度を超す高熱が続き、悪性マラリアになると死に至ることも珍しくない。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040623k0000m040141000c.html