■アルコール依存症82万人、成人男性の2% 厚労省推計
飲酒をやめたくてもやめられないアルコール依存症の人が推計で国内に82万人いることが、
厚生労働省の研究班(班長=樋口進・国立病院機構久里浜アルコール症センター副院長)が
世界保健機関(WHO)の基準に基づき行った、初の全国調査で明らかになった。これまで公式な数
としては厚労省の患者調査しかなく、入院・外来合計で1万7100人(02年10月現在)とされていた。
研究班は02年度から3年間にわたり成人の飲酒実態を調べている。対象は全国から無作為に
抽出した20歳以上の男女3500人。03年6月に面接調査し、2547人から回答を得た。
「飲酒のためにスポーツ、仕事、あるいは友人や親類とのつきあいをあきらめたり、大幅に減らしたりした」
「飲んでいる時に、誤ってけがをしたことが3回以上ある」
「飲酒が原因で不眠、憂うつな気分、神経過敏、幻視、幻聴、他人に対して疑い深くなるといったような心の問 題を経験したことがある」――
こうした17項目について有無を聞き、「はい」の項目をWHOの国際疾病分類(ICD10)の診断
ガイドラインで6グループに分類。過去1年間に三つ以上のグループにあてはまる場合、依存症と判定した。
依存症の割合は男性1.9%、女性0.1%、全体では0.9%。世代別では70歳代が341人中10人
(2.9%)で最も比率が高く、60歳代(0.9%)、50歳代(0.7%)と続く。世代別に依存症割合を人口に
掛け、日本全体では推計82万人とはじき出した。
調査では「暴言・暴力」「飲酒の強要」「セクハラ」など、アルコールによる問題行動の被害実態についても聞き、飲酒関連の被害者を3040万人と推計。
職場の人との飲酒が原因で困った経験のある人は9.5%おり、うち「からまれた」が49%、「飲酒の強要」が36%あった。被害を受けたことで
「人生や考え方に影響を受けた」と答えた人も、被害者の13.4%にのぼった。
久里浜アルコール症センター(旧国立療養所久里浜病院)はアルコール依存症の治療で全国的に
知られる。同病院が作成した、WHOより依存症を幅広くとらえた基準による調査では、依存症が427万人という推計値もある。
研究班では、結果を分析し、今年度末までに最終報告書をまとめる。樋口班長は「国民は飲酒の功罪の『罪』をもっと知る必要がある。
今回、初めて実態が明らかになったことで、依存症の早期発見・早期治療のプログラム作りにつなげたい」としている。
■アルコール依存症の診断ガイドライン■
通常、過去1年間のある期間、次の項目のうち三つ以上の経験があるか、出てきた場合にのみ、依存と確定診断される
(1)飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感がある
(2)飲酒の開始、終了、あるいは量に関して行動を統制することが困難
(3)飲酒を中止したり、減らしたりしたときの生理学的離脱症状(禁断症状)
(4)はじめはより少量で得られたアルコールの効果を得るために、飲酒量をふやさなければならなくなっている
(5)飲酒のために、他の楽しみや興味を次第に無視するようになり、飲酒せざるを得ない時間や、飲酒の効果から回復するための時間がかかるようになる
(6)明らかに有害な結果が生じているにもかかわらず、依然として飲酒する
http://www.asahi.com/health/life/TKY200406170271.html