小笠原諸島:外来トカゲ増殖、固有種昆虫が絶滅の危機
東洋のガラパゴスとも呼ばれる小笠原諸島(東京都)の父島と母島で、
外来種のトカゲ「グリーンアノール」が大増殖して貴重な昆虫類を大量に食べていることが、
神奈川県立生命の星・地球博物館(同県小田原市)の調査で分かった。
オガサワラトンボなど小笠原でしか見られない固有種が絶滅の危機にひんしているという。
調査した苅部治紀学芸員は「昆虫は壊滅状態で早急な対応が必要だ。
トカゲの食害で在来生物が危機的状態になるのは世界でも例がない」と話している。
苅部さんは97年から毎年現地調査しているが、父島では固有種のトンボ5種すべてが
00年から観察できなくなった。母島には同4種がいるが、動きが素早いハナダカトンボを
除いて3種が姿を消した。このほか、中小のタマムシ類やトラカミキリ類、ハナバチ類、
ヒメカタゾウムシ類など、以前は簡単に捕まえられた種のほとんどがいなくなった。
これらの中にも固有種が多数含まれる。
観察の結果、昆虫類の激減はグリーンアノールによる食害が原因と判明した。
このトカゲは北米原産で、体長は約15センチ。花の陰などで待ち伏せして昆虫を捕らえる。
1960年代、米軍の物資の中に紛れ込んで父島に上陸したとみられる。
母島へは80年代に島民がペットとして持ち込んだと推定されている。
現在は両島のいたるところに生息している。小さい昆虫を食い尽くし、
最近ではオガサワラゼミのような大きい昆虫まで食べ始め、00年以降、このセミの声を聞くことがめっきり減ったという。
東京都緑環境課は「重大問題だと認識し、対策を検討中だ。捕獲して根絶するのは難しく、
他の島に拡散させないなどの対応になるだろう」と話している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20040616k0000e040075000c.html