ミラーのお留守番

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283CCミラーたん
ミラーのホワイトデー(14)

 恥ずかしすぎておかしくなってしまいそう。
 絶対に耳の先まで赤くなってる。
 もう限界だった。
 その時――。
「ありがとうな」
 声とともに、ふんわりと頭を撫でられる。
 その気持ちよさに思わず顔を上げる。
 そこには、あの人の穏やかな微笑み。
 私が大好きな、あの微笑み。
 あの人の手には、私が差し出したチョコレート。
 受け取ってもらえた…!
 私の顔に笑顔がはじけた。
284CCミラーたん:02/05/04 03:21 ID:ztbxlVl6
ミラーのホワイトデー(15)

 嬉しくてたまらない。
 言えてよかった。
 渡せてよかった。
 心からそう思える。
 まるで夢のよう。
 ただのカードでしかない私。
 決して口にしてはいけない想い。
 でも、チョコレートを渡すくらいなら許されるかもしれない。
 チョコレートに想いを込めるだけなら…。
 そう思ったから、勇気を出せた。
 そう思ったから、頑張れた。
 だから、笑顔。
 頬を赤く染めたまま、でも幸せいっぱいの笑顔。
 その笑顔の私を、優しく撫でてくれるあの人も笑顔。
 二人とも、笑顔。
 とっても幸せ。
285CCミラーたん:02/05/04 03:22 ID:ztbxlVl6
ミラーのホワイトデー(16)

 そんな幸せの中、私は自分の手に視線を落とす。
 私の手に残った、真っ白なメッセージカード。
 あの人がくれた、まだ何も書かれていないメッセージカード。
「それは好きに使っていいぞ」
 カードを見つめる私に、あの人の声が届く。
 このメッセージカードの使い方…。
 考えるまでもなかった。
 私にはもう…。
 無意識に言葉がつむぎだされる。
「今度…来られたら…」
 一瞬だけあの人に向けた、真摯なまなざし。
 でも、すぐに笑顔でごまかす。
「あ、いえ…何でもありません」
 いけない。
 私は、これ以上を望んではいけない。
 だから、慌てて言葉を飲み込んだ。
 そして、心の中で問いかける。

(このメッセージカードも…もらってくれますか…?)
286CCミラーたん:02/05/04 03:23 ID:ztbxlVl6
ミラーのホワイトデー(17)

 メッセージカード。
 それは、想いを込めるもの。
 それは、気持ちを伝えるもの。
 私の想い。
 私の気持ち。
 それは――。
 ぽふ。
 想いをめぐらす私の頭に、またあの人の手が触れる。
「また来いな」
 微笑むあの人。
 その温かい微笑みが、私の複雑な想いを解きほぐしてくれる。
「はいっ」
 間髪入れずに応える私。
 素直に微笑む私。
 私にできる、一番の笑顔。
 そう、これが今の私の正直な気持ち。
 思い悩むのはよそう。
 多くを望むのはよそう。
 あの人に頭を撫でてもらいながら、幸せいっぱいになる。
 こんな私なんかの笑顔でも、あの人は嬉しそうに微笑んでくれる。
 これでいい。
 これだけでいい。
 私は、これだけで本当に幸せだから。
 これ以上は、望まないの…。
287CCミラーたん:02/05/04 03:24 ID:ztbxlVl6
ミラーのホワイトデー(18)

 あの人の笑顔に送られて、私は部屋を後にする。
 手には、あの人にもらった真っ白なメッセージカード。
 今日という特別な日にもらった、私の新しい宝物。
 決して使われることのない、大切な大切な宝物。
 私にもわかっている。
 私はただのカード。あの人は人間。
 だから、私がこのメッセージカードに想いをのせるのは、いけないこと。
 許されないこと。
 でも――。
 カードをそっと胸に抱きながら、私は思う。
 思うだけなら、私にも許される。
 夢見るだけなら、きっと許される。
 それだけなら、きっと許してもらえる。
 だから私は、このメッセージカードに夢をのせる。
 この真っ白なカードに。
 大切な宝物に。
 素敵な夢を。
 幸せいっぱいの夢を。
 大好きなあの人への「夢」を――。



―――――――――― 完 ――――――――――