ミラーのお留守番

このエントリーをはてなブックマークに追加
227CCミラーたん
ミラーのホワイトデー(1)

「今夜はさくらちゃん李君にホワイトデーのプレゼントをもらうの巻ですわ〜」
「ほえ〜そんな約束してないよ〜」
「大丈夫ですわ〜李君はちゃんとご用意なさってますわ〜」
「ほな、チャッチャともらいに行こか」
「ほえ〜」
 いつも以上にあわただしく窓から出ていくみんな。
 それをいつも通り小さく手を振って見送る私。
 いつも通りのお留守番。
 でも…。
 私は小さくため息をついた。
 いつも通りじゃないのは私の気持ち。
 今日もまた1年で今日しかない特別な日。
 そう…特別な日なのに…。
228CCミラーたん:02/03/14 20:59 ID:u10H1R71
ミラーのホワイトデー(2)

 あれから1ヶ月。
 チョコレートを渡そう…そう誓った日から1ヶ月。
 もう1ヶ月もたってしまった。
 きっと渡そう…!
 そう誓ったのに…結局渡せなかった。
 もっと早くお留守番ができていたら…。
 そう思うと、悲しくて涙が出そうになる。
 でも、それは仕方がないこと。
 私はさくらさんのためにあるカード。
 ただのカード…。
 だから我が侭はいけない。
 私はまぶたに溜まった涙をそっとぬぐった。
229CCミラーたん:02/03/14 21:00 ID:u10H1R71
ミラーのホワイトデー(3)

 あの日のことを思い出す。
 あの人に教わりながら、幸せいっぱいの中で作ったチョコレート。
 完成を見ずに、冷蔵庫の中にしまったチョコレート。
 あの人は「待ってるから」と言ってくれた。
 だから、きっと待っていてくれた。
 でも…私はそれに応えられなかった。
 心を込めて作ったチョコレート。
 私の想いを全部詰め込んだチョコレート。
 渡したかった…。
 あの人が待っていてくれたのに…。
 ぬぐったばかりのまぶたから、涙があふれた。
230CCミラーたん:02/03/14 21:05 ID:u10H1R71
ミラーのホワイトデー(4)

 謝りに行こう。
 そう思った。
 私はただのカード。
 そう、ただのカードでしかない。
 でもあの人は、そんな私にたくさん優しくしてくれた。
 本当に、たくさんたくさん優しくしてくれた。
 だから、一生懸命謝ろう。
 嫌われてしまってもいい。
 許してもらえなくてもいい。
 ちゃんとごめんなさいを言おう。
 どんなに辛くても、どんなに悲しくても、ちゃんとごめんなさいを言おう。
 それが私にできる精一杯のことだから。
 私には、それくらいしかできないから…。
 ちゃんと謝ろう…。
 そう、心から思った。
 もう一度だけ涙をぬぐうと、私はそっと廊下に出た。