「…それじゃあ、悪いけどまたお願いね」
「はい、わかりました」
「さくらー、はよ来な置いてくでー!」
「あーん、待ってよー」
さくらがケルベロスの後を追って、屋根を飛び立つ。
その背中にはフライのカードによる羽根が生えていた。
今日もクロウ・リードの気配を感じたさくらは、その気配を追って、
もう夜になるのにも関わらずケルベロスと共に出かけていってしまった。
ミラーは例によって留守番として部屋に残されたのだった。
さくらの姿に変身したミラーは、遠ざかっていく主の後ろ姿をしばらく見つめていた。
やがて、その姿が見えなくなるとそっと部屋の窓を閉める。
そして、ミラーはベッドの端に座る。
何をするでもなく、ただじっとしている。
主が帰ってくるまでただじっと待つことが、今のミラーの目的だったから。
ミラーは自分が主の役に立てることを幸せに感じていた。
ミラーを含め、全てのカードは主に尽くすことを目的に創造されたのだから。
しかし、ミラーが幸せを感じていたのは、ただそれだけではなかった。
この家にはあの人がいる。
もしかしたら、またお話をする機会があるかもしれない。
その事を考えると、ミラーはとても嬉しくなった。
この感情が一体何を示すのか、ミラーはあまり考えたことがなかった。
ただ、あの人とお話したり、あの人のすぐ側にいるだけで心の内から満たされるものがあった。
もっとあの人の側にいたかった。
しかし、所詮ミラーは魔法によって作り出されたカードだった。
どれだけ人の外見を真似ることができようと結局のところ、人間ではない。
きっとこの望みが叶うことはないだろう。
少し悲しくなり、ミラーは溜め息をついた。
その時、部屋をノックする音が聞こえた。
物思いに耽っていたミラーは、はっと顔を上げる。
「さくらー、入るぞー」
そう言ってドアを開け、顔の覗かせたのはさくらの兄、桃矢だった。
「あ…」
その顔を見た途端、ミラーの胸に暖かい想いが満ちていく。
しかし、主のためにも極力、本人の振りをしなければならない。
そう思った。
だが、ミラーの姿を見た桃矢は、それが妹本人でないことを
どうやら即座に見破ってしまったらしい。
片方の眉を上げ、なにやら怪訝な顔をしている。
いつもながら、どうして自分が本物でないとわかるのか、ミラーは不思議に思う。
どうしようかと思っているミラーをよそに、
桃矢は無言のまま、ずかずかと部屋の中へ入ってきた。
「あ、あの…」
「まったく、またなんかあったのか?」
桃矢は腕を組み、呆れたような顔でミラーの顔を見つめている。
「えっと…その…実は、そうなんです」
「そうか…。やっぱ、詳しいことは聞かない方がいいんだよな?」
ミラーはこくんと頷いた。
「しゃあねえな、まったく」
言いながら、桃矢はミラーの横へと座る。
「しかし、お前も留守番なんかさせられて大変だな」
「そんなこと…」
「ああ、そういや、まだ名前聞いてなかったよな」
「名前…ですか…。わたしはミラーです」
「ミラー? ああ、だからさくらのそっくりさんになったりできる訳か」
「はい、そうです」
「なるほどな。しかし、なんていうか…」
桃矢はミラーの全身をしげしげと見ている。
「見れば見るほどそっくりだな」
桃矢に見つめられてミラーはなんだか恥ずかしくなった。
頬が熱い。
なにかお話しないと、どんどん顔が赤くなっていきそうだった。
「あ、あの…」
「ん?」
「こないだは…クリスマスのプレゼント、ありがとうございました…」
顔をまともに見ることができなくて、俯きながらミラーは言う。
あの日にもらったプレゼントはミラーにとって宝物だった。
もじもじしているミラーの様子を見て桃矢が微笑む。
「ああ、あれくらいいいよ、別に」
「でも…嬉しかったです。本当に…」
「はは、そうか…」
そんなミラーの様子にかわいらしさを感じた桃矢はふと何気なく手を伸ばす。
そして、俯いたミラーの横顔にかかった、髪の毛のふさをそっとよけようとした。
しかし、桃矢の手が頬に触れた瞬間、ミラーが小さくびくっと動いた。
その反応に思わず桃矢は頬から手を離す。
「あ、悪い。びっくりさせちまったか」
「い、いえ、そんなことないです」
あいかわらず頬を染めたまま、ミラーは桃矢をじっと見つめている。
妹と同じ顔をしているのにも関わらず、桃矢はそこに何か違うものを感じていた。
少し潤んだようなミラーの目。
その目はとても優しく、また慈しみ深い。
桃矢はその目にどうしようもなく引き寄せられるものを感じていた。
そして、一度離した手を再び頬に近づける。
今度は髪を払うのではなく、ただその頬に触れたくて。
桃矢の大きな手が、ミラーの小さな頬にそっと触れる。
ミラーは桃矢を見つめたまま、されるがままにしていた。
ミラーの頬はとても柔らかく、また暖かかった。
しばらくの間、桃矢はミラーの頬をその手で優しく撫でていた。
そうして、ミラーの目をじっと見つめたまま、
頬にあてた手を少しずつ、首筋へと滑らせていく。
桃矢は目を細めると、今度は顔を近づけた。
ミラーがゆっくりと目をつぶる。
そして桃矢はその唇をミラーの唇へと合わせた。
柔らかくて暖かい、唇の感触。
ほんの数秒間だったが、とても長い数秒間だった。
唇を離し、再び見つめ合う。
「いいのか…?」
桃矢が口を開く。
ミラーは何も言わずこくりと頷いた。
すでに桃矢の右手は、スカートから伸びたミラーのふとももへと伸びていた。
そしてその手は少しずつ足の付け根へと移動している。
桃矢は様子を窺うようにミラーの顔を覗き込む。
ミラーはきゅっと目をつぶり、抵抗しないことで、全てを捧げても構わないという意思を現わしていた。
桃矢はそんなミラーがますます愛しくなり、再びその顔にゆっくりと唇を近づける。
今度は唇ではなく、その頬に唇をあてた。
そして頬から首筋にかけてを舌先で優しくなぞっていく。
12 :
ヘヘへ :2000/10/18(水) 06:01
最近便秘気味!
へへへ
13 :
ヘヘへ :2000/10/18(水) 06:01
おまえら馬鹿ばっかり!
ダイエー藤井のエイズには笑った!!!
ヘヘへ
「は…あ…」
ミラーの唇から吐息が漏れる。
舌先は徐々に首筋から耳へと近づいていく。
ミラーの髪からはほのかなシャンプーの香りが漂っていた。
ふとももを這っていた桃矢の右手はすでに下着にまで到達していた。
木綿の感触。そして木綿の向こうにある少女のもっとも大切な部分…。
桃矢はそこで、スカートの中からいったん右手を取り出すと、
今度は上着の裾をめくり、その中へと侵入させた。
小さく弧を描くように、腹部から胸元にかけてを右手で優しく撫で上げる。
「あ…はぁ…」
ミラーが再び吐息を漏らす。
その素肌はとても柔らかく、すべすべとしていた。
そして、ミラーの体を這っていた右手がようやく膨らみかけた乳房へと到達する。
ほんの少しの膨らみ。
そしてその膨らみの先にある、ちっちゃな突起。
桃矢はたまらなくなり、左手も上着の中へと侵入させた。
ミラーの背後から、その小さな乳房を両手で揉みしだく。
それと同時にうなじの辺りを唇で甘く噛む。
ミラーはぎゅっと握った両手をその口にあて、荒く息をしていた。
しばらくそのまま胸を揉み続けた後、桃矢は両手を上着から出すと、
ミラーの体を優しくベッドに押し倒す。
ミラーはほとんど抵抗することもなく、ごろんと横になった。
ふと、お尻の辺りを見ると、短いスカートが少しめくれていた。
だが、下着は見えない。
桃矢は思わずスカートの裾を掴むと、それを完全にめくりあげていた。
ミラーの小さなお尻を包み込む、真っ白な木綿の下着があらわになった。
下着の真ん中には羽根のマークがプリントされている。
その下着には見覚えがあった。
洗濯をする時に何回も見たことがある、妹の下着。
こんなところまで、そっくりにできるんだな…。
桃矢はそんな風に感心しながら、白い下着に包まれたお尻を撫で回す。
お尻のやわらかな曲線を、指先で辿っていく。
小さな声を上げてミラーの体がぴくりと動いた。
うつ伏せになっているためにミラーの顔は見えない。
桃矢は屈み込むと、白い下着に包まれたお尻の中へとその顔をうずめる。
石鹸の匂い…。そして少女特有の甘い香りがした。
更に深くうずめるかのように、顔をミラーのお尻にこすり付ける。
ミラーがくすぐったがるように身をよじった。
ミラーたん、ハァハァ…
桃矢は身を起こすと、うつ伏せになっていたミラーを仰向けにひっくり返した。
そして、桃矢とミラーは再び向き合い、互いを見つめ合う。
「なあ…」
桃矢が口を開く。
「もう一度聞くけど…本当にいいんだな?」
「…はい」
ミラーはじっと桃矢を見つめている。
「わたし、お兄さんのこと…桃矢さんのこと、好きですから…」
「…そうか」
「わたしからも、ひとつお尋ねしてよろしいですか…?」
「なんだ?」
「ご存知だとは思いますけど…わたし、人間じゃありません」
「ああ、そうらしいな」
「…あの、いいんですか? わたしなんかでも…」
ミラーは目を伏せる。
どうやらミラーは自分が人間でないことを理由に、
このまま愛されていいのか迷っているようだった。
桃矢にはそんなミラーの様子がどうしようもなく愛らしく思えた。
桃矢は目の前の少女が人間でないことなど、どうでも良かった。
桃矢にとって、相手が人間であるかどうかなど大した問題ではなかったから。
人間かどうかに関係なく、目の前にいるのは一人の少女だったから。
なによりもこの少女がいとおしかったから。
「あ…」
少女が声をあげる。
桃矢は少女の体を強く抱きしめていた。
「人間かどうかなんてどうだっていい。そんなこと心配すんな」
「………」
「…それに、おれもお前のこと、好きみたいだから…」
「…ありがとう」
少女の目には涙が浮かんでいた。
桃矢はその目に唇を寄せて、零れそうになっていた涙を舐め取る。
そして、再び少女の唇に自分の唇を合わせた。
今度はただ触れ合うだけでなく、互いの口の中へと舌を侵入させ、舌同士を絡ませ合う。
舌先を絡ませ合うと同時に、桃矢の手は少女の上着を少しずつめくっていく。
やがて少女の胸があらわになった。
わずかに膨らんだ乳房。そして淡いピンク色をした乳頭。
とても綺麗だった。
桃矢は少女の口から己の唇を離すと、今度はあらわになった胸へとその舌先を寄せ、
少女の柔肌を丹念に舐めまわしていく。
赤ん坊が母乳を求めるかのように吸い付いては、舌先で優しく乳首を転がす。
「はあ…あふぅ…」
桃矢が膨らみかけた乳房に舌先で触れるたびに、少女は愛らしい声をあげた。
少女の甘い匂いに脳の中枢を刺激されるかのような感覚を感じながら、
少女の上着を完全に脱がせる。
少女は上半身に何も付けていない状態になった。
桃矢は上半身だけ裸になった少女の体をしげしげと眺める。
部屋の光の元、少女の体はとても綺麗な体をしていた。
肌と肌を直接合わせてみたくなり、桃矢はセーターとその下に着ていたシャツとを脱ぎ捨てる。
少女と同じように上半身だけ裸になった桃矢は、少女の体を抱き寄せる。
少女の髪が胸の辺りに触れて、少しくすぐったかった。
桃矢は、はいていたジーンズを降ろすと下着からモノを取り出す。
桃矢のモノはこれまでの快感とこれからの期待とで、完全に天に向かって反り返っていた。
少女はびっくりしたように目を見開き、桃矢のモノをしげしげと眺めている。
「ほら、触ってみて」
少女の手を掴み、自らのモノへと近づける。
少女は恐る恐る手を伸ばし、その先端部分にそっと触れる。
桃矢はふと、いたずら心を起こし、下腹部に力を入れた。
すると、桃矢のそれは、ビクンと痙攣したかのような動きを見せた。
「キャッ!」
少女は驚き、慌てて桃矢のモノから手を離す。
桃矢はそんな少女の反応に思わず微笑んでしまう。
「大丈夫だよ、もう一回触ってみて」
桃矢が促がすと、少女は再び桃矢のモノへと手を伸ばす。
少女の小さな手が桃矢のモノへと触れた。
そうして、手のひらを使って小犬を撫でるかのように、優しくさすりだした。
「あ、あの…こんな感じですか…?」
言いながら、今度は両手で桃矢のモノを包み込むようにして握り、一生懸命にしごきだす。
ぎこちない手つきだったが、そのぎこちなさが桃矢を更に興奮させた。
なにより、桃矢を気持ち良くしようと一生懸命になっている少女の健気さに興奮した。
しばらく少女にしごかせた後、桃矢はふと思い付き、しごくのをやめさせた。
そうして、少女の後頭部に手をやると、その顔をそっと自分のモノへと近づける。
「あ、あの…」
少女は困惑しているようだった。
「今度は口でやってみて」
「えっと、あの、どうやってやればいいのか…」
桃矢のモノをすぐ目の前にして困ったように首を傾げている。
桃矢を微笑むと、少女の手を持つ。
「こんな風にやるんだよ」
そう言って、その指を口に含む。
吸い付くようにして、少女の指を前後に出しいれする。
桃矢の口の中では舌先が少女の指の腹を舐めまわしていた。
しばらくそうしてから、少女の指から口を離す。
「…わかったか?」
「はい…やってみます…」
少女は頬の辺りにかかった髪をかきあげると、桃矢のモノへと顔を近づける。
そうして両手で根元を掴むと、口を大きく開けて桃矢のモノをくわえ込んだ。
「おお…」
少女の口の中、その暖かい感触に思わず声が出る。
少女は先程桃矢がやってみせたように吸い付くようにして、
桃矢のモノを前後に出し入れしていた。
口がちいさいために、根元まで入ることはなかったが、
それでも背筋が震えるほど気持ちが良かった。
上目使いに、桃矢の恍惚とした表情を見た少女が更に出し入れするスピードをあげる。
「ああ…」
桃矢は思わず果てそうになっていた。
このまま少女の口の中で果ててしまってもいいかと思ったが、
気を取り直し、少女に止めさせる。
危ないところだった。
桃矢はベッドの端に座り直すと、足を開いて股の間に少女を座らせる。
そうして、背後から手を伸ばし、再び乳房を揉みしだきだした。
右手は少しずつ下へ、下へと下がっていき、ついには下腹部へと辿り着く。
そのままスカートのホックとジッパーを外し、スカートを脱がせる。
少女はもう、下着と靴下だけという姿になっていた。
下着にはかわいらしいフリルとリボンとが付いていた。
桃矢は慈しむように、リボンの周辺、少女の下腹部の辺りに指を這わせる。
桃矢の手の動きに合わせて、少女の息遣いもまた荒くなっていた。
そうして桃矢の指先が下着越しに少女のもっとも大切な部分に触れる。
その途端、少女の体がびくんと動いた。
少女の割れ目にあてがった指先を、上下にゆっくりと動かす。
更に熱く吐息を漏らす少女。
桃矢はその声に堪らなくなり、ついに下着へと手をかけた。
両手でそっと下着をずらしていく。
桃矢の動きに合わせて、少女も腰を浮かせる。
そうして下着は取り去られ、少女の大切な部分があらわになった。
まだ毛も生えておらず、ただ一本の線だけが見えている。
桃矢は床に降りて膝をつくと、少女の膝の辺りを持って、両手でそっと足を開いていく。
少女は握った手を口にあて、恥ずかしそうにあらぬ方向へと目をやっている。
桃矢は開かれた少女の大切な部分に顔を近づける。
そうして舌を突き出すと、少女のそれに舌先を這わせた。
「はあ…」
再び少女の体がびくんと動く。
桃矢はそれに構わずそれの内部へと舌先を入れる。
中にあるひだや豆粒のような陰核を舐めまわし、わずかに滲んでくる少女の汁をすする。
しばらくの間、その行為を続けてから顔を上げてみると、
少女はすっかりぽーっとした表情になって虚脱していた。
30 :
名有りさん :2000/10/18(水) 06:32
朝か〜ら〜晩ま〜で〜ナニば〜か〜り
舐めまわすのをやめ、少女の横に座ると、
少女は力が抜けたかのようにもたれ掛ってくる。
桃矢は少女のそれに右手を伸ばすと、今度はそこに中指を入れてみた。
中指一本だけでも結構な締め付けを感じる。
「はうう…!」
桃矢の胸元に顔をうずめた少女がうめくような声をあげる。
少女は桃矢の腕をぎゅっと握っていた。
そして桃矢はゆっくりと指を出し入れし始める。
指の動きと共に、少女の反応も少しずつ激しくなっていく。
それに合わせるかのように、桃矢も指の動きを早くしていく。
少女の声が段々と大きくなっていく。
「…ああ! ああ! ああぁ!!」
「…ああ! ああ! ああぁ!!」
そうして少女は絶頂にまで達したのか、これまででもっとも大きい声を上げた。
そして、荒い息をしながらも動かなくなる。
少女のそんな様子に満足した桃矢は、自分もそろそろ果てたいと思った。
しかし、さすがに自身のモノが少女のそれに入るとは思えなかったし、
無理にでも入れようとしたらきっと少女に激しい痛みを与えることだろう。
それは桃矢の本意ではなかった。
もう一度口でやってもらおうかとも思ったが、少女はいまだぼんやりとした表情で、肩で大きく息をしている。
仕方なく、少女の下半身に顔を近づけると、その内股の辺りを舐めまわし始める。
少女の内股はすぐに桃矢の唾液だらけになった。
さらに桃矢は少女の出した汁を塗りたくる。
自身の唾液と少女の汁とで少女の内股を濡らすと、
少女に四つん這いになってもらい、その足をぴったりと閉じさせる。
そうして、ぴったりと閉じた少女のふとももの間に自身のモノを差し込み、
ゆっくりとそれを出し入れする。
少女の体温と肌の感触、それに匂い…。
少女の様々な物を桃矢は感じていた。
そうして、あっという間に桃矢は果てそうになり、慌てて引き抜こうとする。
しかし、引き抜こうとした瞬間に果ててしまい、少女のお尻の辺りに精液をぶちまけてしまった。
突き抜けた深い快感と満足感、その二つを感じながら、桃矢は深く息をついた。
少女は四つん這いになったまま、陶然とした表情をしていた。
そのお尻には桃矢が飛び散らせた白濁した液体が垂れている。
それを見た桃矢は、妹の机の上にあったティッシュを手に取り、
少女のお尻やふとももを拭き取ってやる。
すると少女が桃矢の胸元にもたれかかってきた。
甘えるように顔をすり寄せてくる少女。
桃矢も微笑みながら、そっと抱きしめる。
そのまま二人はしばらく無言で抱き合っていた。
しばらくすると少女が顔をあげ、桃矢の方を見た。
しかし、桃矢の顔をじっと見るだけで何も言わない。
「…何?」
桃矢が口を開くと少女はクスリと笑った。
「なんでもないです。ただ…」
「ただ…?」
「こうしているのがなんだか夢みたいに思えて…」
そう言って少女は改めて桃矢に擦り寄ってくる。
「こんな風に好きな人と一緒にいられるなんて、永久にありえないって思ってたから…」
「………」
「だから、桃矢さんが好きだって言ってくれた時、とても嬉しかった…」
「…そうか」
さっきの自分の言動を思い出し、桃矢は少し照れて思わずそっぽを向いてしまう。
そんな桃矢の様子を見て少女は微笑むと、桃矢の背中に手をまわし呟く。
「ずっと、このままいられたらいいのに…」
「ああ、そうだな…」
「あ…」
その時、ミラーが急に声を上げた。
「どうした?」
「…さくらさんが…もうすぐ帰ってきます」
「マジか?」
「はい」
「そりゃまずいな」
二人は慌てて、脱ぎ散らかした服を拾い、身に付け始めた。
服を身に付けた桃矢は、そこらに転がっている丸められたティッシュを拾い、ドアへと向かう。
「じゃあ俺、部屋に帰るから」
「はい…あの…」
「ん?」
「あの…今日はありがとうございました」
ミラーはぺこりと頭を下げる。
それを見た桃矢はミラーの所へと戻り、前屈みになると、ミラーにもう一度キスをした。
「今度、また留守番することがあったら、俺の部屋に来いよ。一人じゃ寂しいだろ」
「はい…わかりました」
ミラーが嬉しそうに微笑む。
「…じゃあな」
そう言って桃矢はドアの向こうへと消えた。
ミラーは桃矢が出ていった後もドアをしばらく見つめていた。
そして祈りを捧げるかのように、両手をぎゅっと抱きしめる。
とても幸せだった。
ミラーは自分が魔法によって作り出されたカードであることを知っている。
そして、人間以外の存在が人間と結ばれることはまずないということもよく知っている。
でも、ただひと時であれ、好きな人と共に過ごせるのであれば、ミラーにとってはそれで十分だった。
他には何も要らなかった。
こんこん。
窓ガラスを叩く音。どうやら主が帰って来たらしい。
ミラーは窓際に走り寄る。
窓の向こうに主の姿が見えた。
「おかえりなさい」
ミラーは窓を開けると、そう言って穏やかに微笑んだ。
<終わり>