681 :
CC名無したん:
San Valentino 1/4
Buon San Valentino !!!
ここ数年は2月に入ると、街中でバレンタインを祝う看板を随分沢山見かけるようになった。
昔はそんなでもなかったと思うんだが、まあ、あまり気にかけていなかっただけなのかも知れない。
ヘンリエッタはアルファロメオのシートからそんな2月のローマの街の景色を眺めている。
「あの、ジョゼさん…」
ほら来た。
喜ぶべき事ではあるんだが、あまり影響されやすすぎるのもちょっと…
「何だい?ヘンリエッタ」
682 :
CC名無したん:2012/02/03(金) 21:13:37.94 ID:LDfuPV9hP
San Valentino 2/4
「バレンタインデーの起源は、ローマなんですよね。」
「え?ああ、そうだよ、よく知ってるね。」
ヘンリエッタの頬がほんのり赤くなる。2月の冷たい風のせいではないらしい。
「クラエスに、教えてもらったんですけど、詳しいお話を忘れちゃったんです…」
こういう時のヘンリエッタは本当に悲しそうな顔をする。
長くて緩やかな崩壊、やがて訪れる暗闇、
まだ普通ならそんな重荷を背負う年齢じゃない。
683 :
CC名無したん:2012/02/03(金) 21:17:01.47 ID:LDfuPV9hP
San Valentino 3/4
「ああ、そうだな。
バレンタイン司教のお話の前に、こんな話もあるんだ。
今から2千年以上も前、女神ユノーを祝うルペルカリア祭というお祭が、
2月にあったんだ。その頃のローマ帝国は男性と女性は別々に
暮らしていたんだが、このお祭のときにだけ男女がめぐり合う事が
許されていたんだ。」
「別々に、ですか?好きな人とも1年に1回しか会えない…
私、そんなの、嫌です!!」
ヘンリエッタは感受性が強い。すぐに何でも自分の事に置き換えてしまう。
684 :
CC名無したん:2012/02/03(金) 21:19:44.07 ID:LDfuPV9hP
San Valentino 4/4
その事が恐らく、ヘンリエッタの不安定さの根元にあると思う。
だから、条件付けだけではない「魔法」を
常にかけてあげないといけない。
「今は、愛する男女が一緒に過ごす日なんだよ。」
ヘンリエッタの表情から霧が晴れ、可憐な白い薔薇のような微笑みが現れる。
これでいい。こうやってヘンリエッタと過ごして行く事が、
自分の選んだ道なんだ。
「ジョゼさんって、何でも知っているんですね…私の事も。」
「ああ、そうだよ、ヘンリエッタ。」
だすえんで