195 :
CC名無したん:
「はっ、はっ、はっ、はっ」
夜。
友枝町の路地裏を走り回る影が一つ。
その影、観月歌帆は何かから逃げるように走り、
そしてとうとう壁際まで追い詰められた。
数瞬、歌帆は呆然と壁を見詰めていたが、
すぐに逆側の空間に体を向けた。
目線の先、そこには奇妙なモノが存在していた。
196 :
CC名無したん:03/04/19 18:44 ID:nwoD8d/i
顔である。
それは人間の男のものであったが、
生気が微塵も感じられない。
死体のようでもあるが、
死体が歩き回るわけはないし、
ソレは先ほどからブツブツとなにかをつぶやいている。
奇妙なのは、
顔しか見えないということだ。
この暗闇のなかで顔だけが浮き上がり
その下にあるはずの体がまったく見えない。
それは普通の世界で普通の生活に
身を置いている者には理解しえないモノであったが、
そうではない歌帆はそれがなんなのか知っていたし、
それが自分に殺意を抱いていることも理解していた。
197 :
CC名無したん:03/04/19 18:46 ID:nwoD8d/i
しかしまさか自分が襲われるとは。
なぜ逃げ道の限られてくる場所に逃げ込んだのか。
こんなことならエリオルに付いてきてもらうんだった。
いまさら考えてもしょうがないことだが、
考えずにはいられなかった。
冷たい汗が、額を伝う。
『鈴』を持っていたあの時ならともかく、
今の自分では勝てる気がしない。
エリオルが颯爽と助けに来てくれるなんて
都合のいいことがあるわけもない。
歌帆のそんな考えを見通したかのように、
『顔』は少しだけこちらに近づいた。
『顔』の全貌が見える。
それは人の体ではなく、
異形の肉の塊だった。
歌帆の倍ほどの大きさで、
左右非対称で、手足がなくて、
人の血肉を寄せ集めただけのような醜さで、
月明かりで肉の表面がテラテラと光っている。
唯一口のようなものが確認でき、
全開まで広げたその口の中に『顔』はあった。
198 :
CC名無したん:03/04/19 18:47 ID:nwoD8d/i
歌帆が顔をしかめると、
口の中の顔は表情を変えることなく言った。
「もう、逃げ、ら、れない」
そうね。歌帆は口の中で
小さくつぶやくと、覚悟を決めた。
肉塊が迫ってくる。
異形の肉を突き破り、
長すぎる人の手が数本伸びた。
それは歌帆に掴みかかろうとしたが、
そうなることはついになく――。
叫びを上げる異形。
切断され、宙を舞う手。
夜空を血の噴水が飛び、
歌帆の全身を少しだけ赤く染めた。
「李くん!」
199 :
CC名無したん:03/04/19 18:49 ID:nwoD8d/i
異形を傷つけた者、
李小狼は両手に持った剣の片方を異形の口内の顔に突き立てた。
浅い。
残った左剣を振りかぶったが、
異形から突き出てきた数十本の手によって地面に押さえつけられ、
身動きが取れなくなった。
その際に少し息が漏れたが、
小狼の表情に変化はない。
いや、薄い笑みさえ浮かべたその口元で、こう呟いた。
「火神」
異形に突き立てた剣に
あらかじめ巻きつけておいた札が反応し、
爆炎が起こった。
体内より焼かれた異形は
断末魔の声を上げながら、
今度こそ死んだ。
200 :
CC名無したん:03/04/19 18:51 ID:nwoD8d/i
肉の焼ける臭いがあたりに充満する中、
小狼は歌帆に近づく。
小狼は闇に溶けるような漆黒の衣服に身を包んでいる。
「驚いたわ」
歌帆は素直な感想を口にした。
「五年前とは別人みたい。
『力』もそうだけど、なにより……
いい男になったじゃない」
そう言われた小狼は照れくさそうに頭をかいた。
だが、すぐに異変に気づいたように背後を振り返った。
先ほどの異形と同じ形の肉塊がもう二体。
狭い路地裏をこちらに迫ってきた。
「李くん!」
「だいじょうぶ。大道寺!」
201 :
CC名無したん:03/04/19 19:40 ID:nwoD8d/i
「分かっていますわ!」
歌帆が上空を見上げると、
そう背の高くない建物の上に大道寺知世と、
異形を囲むようにして重火器を構えた女性たちが数人いた。
知世が、
「それでは皆さん、
よろしくお願いいたします。
…………ファイア(撃て)」
そう言い放った途端
重火器は火を噴き、
たちまち異形どもを穴だらけにして
絶命させた。
後には未だ燃え続ける肉と、
体に無数の穴をあけた肉と、
重火器の轟音の余韻だけが残った。
202 :
CC名無したん:03/04/19 19:42 ID:nwoD8d/i
小狼は外に今の出来事がもれないために
張った結界とともに、緊張も解いた。
疲れた表情の歌帆に声をかける。
「大丈夫か?」
「ええ、おかげさまで」
そう言って歌帆は少し笑った。
けれど。
一つの疑問が。
歌帆に口を開かせた。
「さくらちゃんは?」
問われた小狼はなにも答えない。
だが、いつの間にか下りてきていた知世が代わりに答えた。
「さくらちゃんは………
………いなくなってしまいました」
そう、答えた。
203 :
CC名無したん:03/04/19 19:49 ID:nwoD8d/i
原作CLAMP
予告編
「なぜ消えたのか。いつ消えたのか。どこに消えたのか。どうやって消えたのか。なにも分からないんだ」
あれから、五年。
「ケルベロスも月(ユエ)も、いないんだ」
消えたクロウカード。消えたカードキャプター。
「人間開発機関『エヴォルヴ』。
僕がまだクロウ・リードだったときに、
敵対していた組織ですよ」
五大魔導師
最強の李家四姉妹
マジック・アカデミー
「魔力を月(ユエ)に譲渡した今のお前など、敵ですらない」
「木之本さくらは気づいたのさ」
CC計画
「自分が存在していてはならない存在なのだということに」
204 :
CC名無したん:03/04/19 19:49 ID:nwoD8d/i
全魔術師の敵。
全存在の敵。
「CC? ああ、カードキャプター(捕獲者)ね。
それがどうしたッスか?」
「CC」
「C」ard.「C」aptor.
「クロウ・リードの転生計画。我々はそれに便乗させてもらった」
「C」row.「C」ard.
「木之本さくら。さくら。チェリー、ね。出来すぎじゃねぇ?」
「C」row.to 「C」herry.
「クロウ・リードは未来を見ることができ、
木之本さくらはそれを完全に制御した。なら、その次は?」
「C」herry.to 「C」―――――
「まさか『CC』とは、『C』をこの世界に降臨させるための、
『C』atalyst(触媒)なのか?」
205 :
CC名無したん:03/04/19 19:49 ID:LfGwuG3Q
206 :
CC名無したん:03/04/19 19:52 ID:nwoD8d/i
混沌。
すべてはここより。
「クロウ・リードは確かにこの世で一番強い『魔術師』だった。
だが、この世で一番強い『存在』だったわけではない」
破局。
ここよりすべては。
「マジックアカデミーの無敵魔導艦隊が全滅。
これを全部さくら一人がやったのか?」
混沌の破局。
すべては、すべてへ。
「さくらカード!?」
「違う! これは…」
星の力。
「二つに分けた魔力を戻すことぐらい、造作もない」
「桃矢がボクにくれた力、返すよ」
死の力。
207 :
CC名無したん:03/04/19 19:52 ID:nwoD8d/i
「小狼くんも、知世ちゃんも、知世ちゃんのおかあさんも、
桃矢おにいちゃんも、お父さんも、雪兎さんも、ケロちゃんも、
月(ユエ)さんも、エリオルくんも、観月先生も、寺田先生も、
苺鈴ちゃんも、千春ちゃんも、奈緒子ちゃんも、利佳ちゃんも、
山崎くんも、みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな………………
…………………………………………………………………死ね」
最強の魔法。
「『絶対に大丈夫』! さくらなら、そう言うんやないか?」
「いいや、もう『絶対に無理』だね」
禁断の魔法。
「馬鹿な! 全カード同時発動だと!?」
そして。
「レリィィィィィィィィズ(封印解除)!!」
〈CC〉
来春放映