217 :
130 & 133 ◆Hp0lb9EQ4Y :
#トリップつけてみました。
>>211の小説を少しUPしますです。
ただ、続きはいつになるやら……(^^;)すみません。気が向いた時に書いてる
んで
#えっちなのの方に軸足が……
「それで、お話ってなに?」
夕食後のくつろぎの時間、さくらが訊いた。
木之本家のダイニングには、父の藤隆。隣は兄の桃矢。それぞれの前には、藤
隆がデザートとして買ってきたショートケーキが一つずつ、皿に置かれている。
「うん‥‥その‥‥」
話があると言いだした当人である藤隆が、言い難そうに俯く。なんでも話す優
しい父親である藤隆が、これほど困っているのは珍しい。
「実は‥‥さくらさんにお願いしたい事があるんですけど‥‥」
「なぁに?わたしにできることなら、なんでもするよ」
ケーキを一欠片、嚥下したさくらは、間髪を入れずに答えた。如何にも素直な、
さくららしい答え方だった。
「ぼくの大学の‥‥春野くんが再来週、結婚するという話は‥‥しましたよね?」
「お父さんの大学で、同じ先生をしてる人でしょう?」
さくらはその話を思いだした。
藤隆の同僚で、助教授をしている女性が今度結婚する事になったという話は先
週、聞いた。既に藤隆に来た招待状も見ている。
「その春野くんの結婚式で、ちょっと困った事があってね」
「どんな事?」
「春野くんはクリスチャンで、結婚式もちゃんと教会で挙げる事になっているだ
けど、トレーンベアラーとリングベアラーを頼める子供が居ないんだ」
如何にも困ったという顔で、藤隆が言った。
219 :
_:03/08/19 23:19 ID:92D7JHai
「と、とれ‥‥‥って、なに?」
はじめて聞く言葉に、さくらは戸惑いを隠せない。復唱しようとするが、舌が
ついていかなかった。
「トレーンベアラーって言うのは、お嫁さんが式場に入る時に、ウェディングド
レスの裾を持つ役の事だよ」
その言葉に、さくらは結婚式の様相を思い浮かべた。神聖な結婚式。真っ白な
ウェディングに身を包み、ヴァージンロードをしずしずと祭壇に進む新婦に、し
っかり自分自身を重ねているのが如何にも女のコである。
そう言えば、確かにウェディングドレスにはベールが付いていた。ただ、それ
を持って入る役には今ひとつ印象が薄い。
最近のドレスはだいぶ短くなったが、正式なウェディングドレスではベールは
床まで引く長さがあるのが正しく、また、ドレスの裾もかなり長い。その為、そ
れを持って入る役が必要で、天使をイメージする子供にそれをさせるのが格式に
なっている。
「じゃ、もう一つのリ‥‥リ‥‥」
「リングベアラーの方は、結婚指輪を祭壇まで運ぶ役の事なんだ」
やはり舌の回らないさくらの先を捉え、藤隆が答えた。
「ふぅ〜ん」
言いながらさくらは陶然とした顔を見せた。
「どっちも、ちょうどさくらさんくらいの子供にその役をやって貰うんだけど、
春野くんも新郎さんの方も、そういう親戚や知り合いが居なくて困ってるんだ」
藤隆はそこで一度さくらを見た。
「それで、春野くんにその事を聞いた僕のところの学生が、前にさくらさんと知
世ちゃんが大学に来たのを覚えていてね。それで、知世ちゃんにトレーンベアラ
ーを、さくらさんにリングベアラーをやって貰ったらどうだろうって‥‥言いだ
したんだけど‥‥」
「えぇ?本当に?やりたい!やりたい!」
思わず身を乗り出し、さくらが言った。
結婚式というだけでも充分憧れの的。そこに参加をして欲しいというのは願っ
てもない事だ。
ただし、自分が結婚する訳でもないのに、ウェディングドレスを着たところを
ちゃっかりとイメージしているのは、少し僭越だろう。
「いいのか?さくら」
黙って話を聞いていた桃矢が、唐突に言った。さくらが顔を向けると、
「リングベアラーは、普通、男のコがやることになってるんだぞ」
「ほえ?」
桃矢に言われた事が一瞬呑み込めず、さくらはきょとんとした顔をした。
何度か頭の中で繰り返し、意味を組み立てて見る。
それが組上がった時、さくらは軽い目眩を感じた。
「じゃ、わたし、男のコの役をやるの?」
さくらが自分を指差して言った。
桃矢と藤隆が揃って頷いた。
「ほぇぇーーーッ!」
さくらは思わず叫んでいた。