2ch閉鎖より削除忍引退にショックを受けた人の数→
「もうすぐ3ヶ月かぁ。。」
秋ナスのごまあえを作りながら忍がつぶやいた。
夏の終わりのあの日、削除人を辞めてから、もう季節がひとつ過ぎようとしている。
引退の決意をひろゆきに伝えたとき、大学受験のためと言ったが、
本当はもうふたつ理由があった。
(2chはもう大丈夫。
あたしひとりがいなくても、きっと大丈夫…。
だって、みんなが2chを守るためにあれだけのことをやりつつあるんだから)
2chを揺るがした閉鎖騒動の時、多くの住人たちが2chを守るために力を尽くした。
bbs.cgiの改良、HTMLの軽量化、そして最前線の彼らを援護した無数のエール。
2chは目前の危機を乗り切りつつあった。
214 :
:01/11/25 04:13 ID:AZGySwx2
それを見守っていた忍は思った。
(大丈夫。
この先どんな困難があっても、2chのみんなはきっと乗り越える。
例え2chの名前が消えるようなことがあっても、ここに居る人びとの想いは消えない。
だから、大丈夫…)
そう確信したとき、忍は批判要望板にスレを立てた。
タイトルはただ一言「 大丈夫。 」と。いくつもの意味を込めて。
そして、忍は削除人を辞めた。
自分一人いなくても2chは動き続ける。無数の人々の力で。それを見たかった。
今でも削除板が気になってのぞいているが、一人では忍の代わりになれなくても、
何人もの削除人たちの働きが忍の代わりを果たしている。
(ふふっ、みんながんばってね。あたしも受験がんばってるよ)
そうモニターの向こうの削除人と復帰屋、そして野次馬たちに無言の言葉を送る。
それが忍の日課になっていた。
こうして台所に立っている時も、彼らのことを気している忍だった。
215 :
:01/11/25 04:13 ID:AZGySwx2
「何たそがれてやがる.また来てやがるのか」
玄関からの声に忍は振り向いた。
スキンヘッドの中年男。この部屋の本来の住人だ。
忍 「おかえりなさーい。ちゃうちゃう♪」
茶羽 「何がお帰りなさいだ!
ったく,いつのまにやら勝手に合鍵つくりやがって.
この不法侵入者! 不良娘! 脳無し!!!」
忍 「だってえ、ちゃうちゃうったらお酒ばかりで、キチンとご飯食べていないでしょう?
あたしがご飯つくってあげないと、体こわしちゃうじゃない」
茶羽 「だいたいお前は受験で忙しいとか言って,削除人やめやがったんだろうが!
こんなヒマあったら,削除板行け! 少しは連中を手伝ってやれ,脳無し」
忍 「ほらほら、今夜は秋ナスなのお! 他にも旬の野菜料理つくったんだからあ♪」
茶羽の罵倒をよそに、食事の仕度を続ける忍。
いつも罵倒の内容は右の耳から左の耳に流しているが、「脳無し」と「馬鹿」の
回数だけは数えている。
216 :
:01/11/25 04:14 ID:AZGySwx2
「脳無し」と「馬鹿」を合わせて50回ほど聞いた頃、忍は「そろそろかな」と
いつもの作戦に移る。
忍 「ふ……、ふえーーーん!!!!
ちゃうちゃうはあたしなんか邪魔なんだあーー! ふえーん!!!」
罵倒に熱中してゆでダコのように赤くなっていた茶羽の顔が、みるみる青くなっていく。
茶羽 「あ…あ…あ…,泣くな,泣かんでくれ,脳無し…あ,いや忍.
あ…また近所の噂になるから….
な,だからとりあえず泣きやんでくれ,頼むから,な…」
さっきまでの罵倒が嘘のように、うろたえながら忍をあやす茶羽。
涙でぐしゃぐしゃになった顔をぬぐいながら、こっそりペロリと舌を出してる忍。
今日もまた負けちまったなあと弱りつつも、ちょっと嬉しい気もする茶羽だった。
二人がこんな毎日を過ごして、もう3ヶ月になろうとしていた。
――― 了 ―――