インフォテック法律事務所

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これまでの判例では、「顧客名簿」、「技術ノウハウ」、「販売マニュアル」等、一
般的に商品として顧客に提供してはいない秘密情報が問題となってきました。しか
し、今回の事案で問題となっている視聴率情報は、秘密保持契約等で管理はされてい
るものの、本来的に、「顧客に商品として提供している情報」そのもののようです。
不正競争防止法が、こうしたものまで営業秘密の保護として認める趣旨なのかは、疑
問が残るでしょう。これに対する権利行使がみとめられれば、秘密保持契約を締結さ
せているデータベース全般について、権利行使可能となると思われるからです。

「顧客に対し厳格な秘密保持義務を課した上で開示している」というのが、商品たる
情報として提供しているのか、技術上又は営業上の情報として開示しているのかとい
う性質論によって判断が異なってくると思います。

私見としては、開示が情報提供サービスであれば、あくまで商品としての情報であ
り、「技術上又は営業上の情報」(不正競争防止法2条4項)に該当しないという理由
で、今回の事案についての請求は認められないと思います。しかし、業者同士の技術
上又は営業上の連携の一環として秘密保持契約の下開示しているのであれば、権利行
使が認められると思います。すくなくとも、これまでの判例や教科書において例とし
てあげられている「技術上又は営業上の情報」とは明確に異質であり、興味深い問題
です。情報提供サービス業者にとっては朗報かもしれませんが、認められるかどうか
は微妙な事案かと思いますので、今後の展開に目が離せません。

すくなくとも言えることは、ビデオリサーチが「顧客に対し厳格な秘密保持義務を課
した上で開示している」のが単なる情報提供サービスなのか、それとも業務提携等の一
環として開示しているのかという点を、明確に回答する必要があると考えます。