14 :
呑んべぇさん:
日曜祝日を除いて毎日稽古という、正に演技にだけ没頭できる渇望していた場所。同期の仲間と共に笑い合い、
時にぶつかり合いながらも切磋琢磨を続けた充実した日々。夕方、稽古が終わったあと家に帰り仮眠をとって、
深夜から朝まで築地市場のお寿司屋さんでアルバイト。真夜中の三時、休憩時間に起き出した市場の喧騒を聞きながら、
薄暗い明かり下で長い台詞を覚えたりしたものである。
月日はあっという間に過ぎてしまい、文学座附属演劇研究所を卒業する日が来てしまった。最後の公演、
アトリエでのカーテンコールのときに感じた思いは生涯最高の宝物の一つである。