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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A8%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3 デンデラ神殿
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デンデラ神殿とオリシスの墓、、、、、

翌日、我々は王家の谷にある壮麗なラムセス6世の墓を訪れた。エミルは長いくだり階段の壁にあ
るデザインを指した。驚いたことに、長いくだり廊下の壁に書かれていたのは、どう見て
も精子だった。だが何故古代エジプト人が精子のことを知っているのか?

その答がわかったのは翌年、ジェレミー・ナーバイの宇宙の蛇(1998)を読んだときだ。これ
については後に述べる。

神殿を見て喜んでいた私は、突如として胃の調子がおかしくなり、嘔吐と下痢に襲われた。
(迷信深い人間なら、ツタンカーメンの墓なんかに行ったからだと後悔していたところだ)。おか

げで、女王の谷へ行ってからもさんざんだった。とはいうものの、例え何があろうと、ハトシ
ェプスト神殿の壮麗さは失われるものではないー―マシンガンを持った衛兵がうろうろしていたとしてもだ。

翌朝になってもまだ胃の調子は悪かった。朝食前にカルナック神殿に行ったのだがー―例によっ
て、その壮大かつ稠密な柱に圧倒されたがー―いつも五時半に起きる私にとってすら、そ
れは少し早すぎた。
50:2008/06/03(火) 18:37:45 ID:3fcDkuEE0

腹痛のせいでデンデラ神殿の見学も散々だったー―昔、「スターシーカーズ」(1980)という本を
書いて以来、ずっとこれを見たいと念願していたというのに、実に残念だ。ここの天上に
は有名な黄道12宮の図がある。シュワレール・ド・リュビックによれば、この図はエジプト人が春秋
分点歳差を知っていたことの証明だという。

「歳差」というのは地球の地軸が、ちょうどコマ(独楽)のようにわずかに首ふり運動をして
いる結果として起こるものだ。仮に地球の地軸が巨大な鉛筆で、これが北極から南極まで
貫いているとしよう。さらにその鉛筆の両端がサーチライトになって宇宙を照らしているとする。
もし天が平面の天上なら、そのサーチライトはそこに円を描くだろう。この円が一周するのに2
万」5776年かかる.

そういったわけで、このナメクジのように遅い現象に、古代人が何故これほどまでに執着
したのか、というよりもなぜそれを知っていたのか、想像するのは困難だ。

歳差運動の実際の効果は、それによって星座が後ろに移動していくようにみえることだ。
だれもが知っているように、行動12宮の星座は白羊宮から、金牛宮、双児宮、巨蟹宮と進
行していって、最後は磨かつ宮、宝瓶宮、双魚宮で終わる。しかし、星に関しては、毎年
春の始まりは少しずつ早くなっている。もしも歳差の速度が何千倍も速ければ、ある年に
は双魚宮に春が来て、翌年には宝瓶宮、さらにその翌年には、磨かつ宮、という具合にど
んどん後ろにずれていくのが実感できるだろうー―東ではなく西方向きにだ。

古代人は、この天の大時計の奇妙な逆行現象を知っており、それを極めて重視していた。
古代人にとってそれはあたかも神々の心を垣間見るように思えたらしく、それが何を意味
するのかを深く考えた。あらゆる文明がそれを知っていた。イヌイット、アイスランド人、北欧人、
フィンランド人、ハワイ人、日本人、ペルシア人、ローマ人、ギリシア人、ジンド人。まるで、私たちの祖先
は夜空を眺める以外、何もしていなかったようだ。
51:2008/06/03(火) 18:40:01 ID:3fcDkuEE0

デンデラの彫刻には、簡単に言うと、二つの黄道十二宮が重なり合って示されている。ひと
つはその東西軸が双魚宮を通過しており、それが、双魚宮の時代の初め、つまり今から約
2100年前に造られたことを示している。だが、その黄道12宮の縁にある2つのヒエログ
リフが第二の軸を示しており、それはさらに4000年以上前の金牛宮の時代の始まりを通
過している。つまり、デンデラの建造者たちは、金牛宮が白羊宮へ、それから双魚宮へと
道を譲るということを知っていたー―歳差運動のことを知っていたのだ。

簡単に言えばエジプト人は、単に地球のメートル単位までの正確な大きさを知っていたのみなら
ず、彼らが存在していなかったとされる2万6000年も前のことについても知っていた
ということになる。

カイロに帰る前に、もうひとつ立ち寄るところがあった。私が一番楽しみにしていたところだ
ー―アビュドスのオリシス神殿の背後に建てられた神秘の「オリシスの墓」である。この神殿はラムセス二世
の父であるファラオ、セティ1世によって建てられたとされている。このラムセス2世は、聖書の中で
イスラエルの民を圧迫したと書かれている人物だという。

このオセイリオンは、ちょうどギザのスフィンクスの神殿と同様、巨石のブロックで築かれた小さな神殿だ。
この建築は装飾ひとつない殺風景なもので、彫琢を極めた壁の装飾を持つカルナックやルクソールの
神殿とはまったく趣を異にしている。私が見たいと切望していたのは、これを造ったのが
アトランティス人ではないかと考えているからだー―スフィンクスを刻み、スフィンクス神殿を建てたのと同じ
人々である。

これが発見されたのは20世紀初頭のこと。フリンダーズ・ピートリーと助手のマーガレットマレイは、セティ
1世の神殿の背後の丘にもうひとつの神殿があると考え、そのあたりの砂を除去していた。
52:2008/06/03(火) 18:45:22 ID:3fcDkuEE0
彼等の除去した砂は何千トンにも及んだのだったが、結局この仕事を完遂したのはアンリ・Eナヴィル
という教授だった。教授は1912年、これがセティ1世の神殿の建築とはまったく似ても
似つかないものであることに気づいた。その様式は、3石塔(トリリトン)を備えたストーンヘンジの
ミニチュアのように思われたのだ。

ナヴィルの作業は第一次世界大戦によって中断したが、その後、ヘンリ・フランクフォートという若い考
古学者がこれを受け継いだ。彼はその壁に書かれていたー―彫られていたのではないー―
セティ1世の名と、陶器の破片を発見した。そこに書かれていた文字は「セティ1世はオリシスに仕える」。
この破片は、フランクフォートの研究に決着を付けたように思われた。オセイリオンはセティ1世によってオリシスの
神殿として建てられた。と彼は結論した。

マーガレット・マレイの指摘によれば、ファラオというものは過去の遺物に自分の名を書き加えること
を好むものであり、たとえセティ1世による銘文があったとしても、何の証明にもならないと
いう。カフラー王の像が、彼がスフィンクス神殿の建造者である証明にはならないのと同様だ。さら
にこの神殿は、その巨大な石のブロック――中には長さ25フィート(約7・6メートル)に達するも
のもあるー―とともに、上にあるセティ1世の神殿とは似ても似つかない。

だがこの当時、マーガレット・マレイは学会では奇矯な考えの持ち主――例えば中世の魔女は有角
神パンを崇拝するカルトの女司祭であったとかー―として悪名を高めつつあった。だから彼女
の言葉に耳を貸すものはほとんどいなかった。

だが、それよりもはるかに素直なシナリオがあるー―つまりオセイリオンはセティ1世の神殿よりもはる
か以前に築かれたものであり、セティはオリシスの歓心を買うためにここに神殿を建てたいと考え
たのだ。彼は自らオリシスの僕と名乗っていたほどだから。
53:2008/06/03(火) 18:46:47 ID:3fcDkuEE0

いずれにせよ、ナヴィルは真の直感の持ち主だった。彼はオセリイオンこそ「エジプト最古の建築物」
かもしれない、と述べた。実際、その通りかもしれない。この建築物には大きな謎がある。
我々が見に行ったときは、水位の上昇のためにまるで水泳プールのように見えた。ナヴィルはそ
れが原始的な水道設備だったのかもしれないとすら考えたが、この水は地下水位の上昇の
結果であって、オセイリオンの中央舞台の周囲の深い溝は間違いなく何らかの壕として造られた
ものだ。この壕の背後には人一人が入れるくらいの大きさの小部屋が17室あり、修道院
を思わせる。それから7年後の今日では、壕も舞台も水没している。

オセイリオンが建てられているのは人工の塚の上である。これはギザの3大ピラミッドを思い起こさ
せるし、また水の存在は原初の創造神話をほのめかしているようにも感じられる。神官た
ちは各小部屋の中で、静かな水面を見つめながら「最初の時」を瞑想したのだろうか?

私は斜面を降り、できるだけ水に近づいてみた。その深い緑には魅了される。ずいぶん長
くそこにたっていたのだろう、ジョイが声を張り上げ、他の皆はもう言ってしまった、門番
が神殿への扉の鍵を掛けようとしている、と告げた。私は急いで神殿に戻った。その13世
紀の彫刻と銘文を見ると再び現代世界に戻ったような気がした。

オイセリオンは間違えなく、この世界で最も強力な場所のひとつだ。だが、そこに到達するのが
至難の業であるのは悪いことではない。なぜなら、大量の訪問者が押しかけたりすれば、
その力は吸い取られてしまうだろうから。実際のカルナックでは、大立石のエネルギーはすでに観光
客によってあらかた吸い尽くされている。今もその最初のエネルギーを保っているのは、離れ
たところにある小さな石だけだ。