現時点で僕が知る特撮作品の中では間違いなく最悪に位置する作品です。
昔の作品なので仕方ない、と目を瞑ろうという要素もあるのですが、それを差し引いても酷すぎる。
結構長くなるとは思いますが、箇条書きしてみたいと思います。
まず主人公について。
仮面ライダーV3を見ていても思ったんですが、何で復讐のために始めた戦いなのにやたらと人を助けたり、いわゆる寄り道的なことばかりになるんですか?
彼の目的は友人の敵を討つという非常にシンプルな設定ですが、それが半分忘れられて渡り鳥のように旅をしながら悪人を懲らしめると言う普通のヒーローのようになってしまってます。
これは恐らく作り手が復讐の重さを理解していなかったからなんじゃないかと思います。
復讐というのは敵を滅ぼすための戦いであり、守るための戦いではない。
仮面ライダーV3は一応家族の墓前で人々を守るために戦うことを決意したり、ライブマンやファイブマンでは復讐ではなく守るための戦いをしなければならないと踏ん切りをつけたり、ウルトラシリーズではほぼ復讐のための戦いは否定されて続けてきました。
しかしこの作品は一切復讐に関してはフォローなし。
まがりになりにもヒーローとしてのキャラ作りをするなら、その辺はしっかりしてほしいです。
別に僕は復讐と言う正義を否定するわけではありません。
人間誰だって大事な人を無残に殺されたら、他のものを省みずに復讐に走ってしまうのもこれはもう仕方ないでしょう(僕だって分かりません)
それだけに復讐と言うテーマは決して軽々しく扱ってはいけないし、子供に見せるヒーローとしての姿としてはどうかと思います。
ましてや宮内さんは「子供番組はヒーロー番組だ」と公言していますが、この人の言う教育番組がこれなんでしょうか(まあ演者である人に言っても仕方ないんですが)
とにかくこの辺はヒーローとしての設定として存在するだけという感じで、全くストーリー上で活かされていなかったと思います。
ヒーローに復讐という設定を出してはいけないとも言いませんが、使うなら使うで上手く活かして作品作りして欲しいです。
くどいようですが、復讐と言うのはそんな軽いものではないんですから。
次に作品の展開について。
仮面ライダーのときもとにかく人がゴミのように殺されて不快でしたが、この作品もとにかく酷い。
この作品を見て感じるのは、暴力、暴虐、粗暴。
まず今作の悪役であるダッカーは、ヤクザに毛が生えたような連中であり、いつもいつも似たような服装の男たちが、目を付けた人間を見つければ問答無用で攫う、もしくは目的のためにとことん痛めつけます。
例えそれが女性であっても髪の毛を掴み、顔を引っ叩き、集団でよってたかって一人や二人の人間に暴行を加えます。
中には子供がその犠牲になることも。
特にボートに乗っていた少女のボートがいきなり爆散してしまうのにはビックリしました。
しかもとある話の冒頭でこれですよ。
正直これだけでこの作品が嫌になってきます。
余談ですが仮面ライダーを見ていたとき、大人は簡単に殺されるのに、子供はわざわざ後を追いかけて家を調べた後、わざわざ基地にまで連れてくる(そして殺さない)という
大人との対応の違いが気になり「何で子供は殺さないのか」とか思っていたんですが、実際に子供が殺されるのを見たら本気で引きました。
特撮作品は数多いですがこのように人々が暴力で蹂躙されるというのはそうはありません。
大抵は怪人、怪物が何か特殊な方法で人々を苦しめる、もしくは呆気なく殺してしまうパターンがほとんどです。<BR>
勿論それはそれで人々は困らされますし、被害のそれは今作より大変でしょう。
しかし現実味がなかったり、あまりに簡単すぎていわゆる恐怖や嫌悪感を感じることはなかったです。
だからです、どうにも普通の人が普通の人に普通の手段で蹂躙される姿があまりにも見苦しく、醜く、そしてシュールなのです。
またダッカーも作戦が凄いです。
特にビックリしたのが街中にガソリンを撒いて街を焼き尽くそうとした回。
これは元々これが主の目的だった回ではなく、計画が上手く完了したことでの祝いだったと記憶していますが、何にしてもとんでもないことに変わりはないです。
そして散々やりたい放題をしてきたダッカーにも正義の裁きが下ります。
ズバットスーツを来た早川建、怪傑ズバットがダッカーを打ちのめします。
しかしダッカーといってもその人員は全て普通の人間。
そしてズバットもムチ、もしくは徒手空拳で敵をなぎ倒します。
まあ言ってみれば暴力です。
勿論それは他のヒーローでも同じなのですが、どこかその戦いに畏怖を感じてしまう。
それは相手が怪物であるか人間の姿をしているかの違いがあるだけ。
適当な戦闘員は例によってズバットには簡単に倒され、すぐに画面から姿を消します。
とはいえその各回でのボスを相手にすればそういうわけにはいきません。
戦意を喪失しているボスを相手に、ズバットは殴り、ムチを振るい
「飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か!?」
と問います。
勿論その真犯人は終盤まで秘密なので毎度毎度そのボスは真犯人というわけではないです。
しかし例え本人が否定してもすぐには信用せず、ある程度痛めつけ、どうやら本当に関係のないことを知ると、ズバットアタックで止めを刺し「この者、○○をした重犯罪者」
と記したカードを置いてまた去っていくのです。
先ほどまで散々に一般人を痛めつけていたのに、どっちが犯罪者なのか分からなくなってしまいます。
これを見ると、怪物なら何をされても何とも思わないのに、人間だと恐怖を感じるという人間の身勝手さと言うのも感じてしまいました。
他のヒーロー番組においても、ヒーローが怪物であれ人間であれ力で敵を捻じ伏せていることに変わりはないのに。
無論そんなことを描いているわけでないのは一目瞭然ですが。
ただこの作品でちょっと思うのが、主人公が自分のことを自分でヒーローと言っていること。
あまり特撮作品において自分達を正義のヒーローと言う言い方をする作品はあまりません。
強いて言うならカーレンジャーですが、あれはある意味ネタとしての意味合いも強いのであれは例外でしょう。
これだけただ暴力を振るうことしか出来ないうえに、戦う動機が敵討ちという狂人でありながら、自分のことをヒーローと呼んでいる。
もしかしたらこれは上記したようにあまりにヒーローどころか人としてもどうかと思う人物にあえて言わせることで、逆の意味でヒーローとは何ぞやと考えさせるテーマにしている、わけないですよね。
はっきり言って何も考えてないだけとしか言い様がありません。
あとこれは過去の特撮作品、まあ昭和時代の作品でもいえることなのですがあまりにも展開が唐突。
何かで戦闘が起きて爆発が起きた、と思うといきなり次の場面になっている。
そんなことがしょっちゅうです。
特にこのズバットだと、早川が銃で散々に射撃された後、いきなり場面が変わって大笑いしている悪党にズバットが姿を現す。
これは言葉では上手く伝わらないと思いますが、それでもやはり辛いものがあります。
特に酷い回として、ダッカーの手により狂犬病の犬に噛まれた少年がそのまま放置された話を見たときはとことん呆れてしまいました。
その父親も狂犬病で助けることの出来ない息子を撃とうとした心のフォローもされてないし、子供も狂犬病にされた飼っていた愛犬を建物の上から投げ落とすというシュールさ。
この回は本当に滅茶苦茶で、この回を見て「この作品は最悪だ」と判断しました。
この話に限らず最後の最後まで突っ切った作品。
上記したようにこの作品が個人的な特撮作品ワースト1ですが、この頃の特撮ってこんなもんなんですかね?
あんまり昔の特撮に関して詳しくはないのですが、どうなのかなあと思ってしまいます。