※※※  私の特オタ履歴書  ※※※

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53どこの誰かは知らないけれど
石上は日本特撮が相変わらず能や歌舞伎の延長上でしかない被り物に頼り、
世界標準であるコマ撮りを導入しない点を批判しているだけで、
ターゲットを子供に絞る以前の作品(主に1960年頃まで)ならば、一本の“映画”として
色眼鏡を通さずに評価できた貴重な人材。怪獣そのものは荒唐無稽過ぎて
嫌いだったようだが、手元の日本映画作品全集(72年号)を紐解いても、
他の評論家には見向きもされない“俗悪映画”の中身、
具体的には「地球防衛軍」のパノラマチックな特撮演出や
「妖星ゴラス」の脚本と演出などを褒め称えており、一概に批判できない。

都筑道夫など「原子怪獣現る」はドラマ性が高く、特殊撮影も本物と見紛うもの
だが「ゴジラ」は本編も特撮も子供のごっこ遊びと酷評、日本は海外を見習って
大人の鑑賞に耐えうるSFを作れと書いている。
この辺の世代はきらびやかなアメリカ文化にアイデンティティを打ち砕かれ、
邦画=視聴に耐えないと決め付けている輩が多いだけに、
石上らの孤軍奮闘は充分評価に値しうるのではないかな。

日本独自の「ぬいぐるみ」と「ミニチュアショー」を受け入れる度量を備え、
さらに一般の映画評論家からは見向きもされないあろう、量産された娯楽作品の
数々を公平な視点で評価できるのは我々オタク第一世代くらいなんだろう。
もう少し後の世代になると、昔の映画はツッコミを入れて楽しむものと
抜かす奴、進歩主義に立脚して、自分が生まれる前の文化をすべからく否定する
ような奴が幅を利かせてくる始末・・・
80年代以降の「テレビ探偵団」に代表される、冷酷な笑い捨て文化は罪深いな。