これはあくまでも俺個人の意見なんだけど、
山崎努の根本的な犯行動機っていうのは、「自分自身を除く世間全部に対する激しい憎しみ」だったんじゃないか?って思うんだが。
彼の三船に対するラストシーンでの独白から考えると、それ以外に無いように感じる。
ターゲットになった三船の靴会社の社長さんは、あくまでも、彼の目の前に存在した手近な「自分より良い境遇の代表」として選んだにすぎない気がする。
この犯罪によって、彼は自分の優秀性を世間に示すとともに、自分を冷遇している世間に対して復讐したかったんじゃないか?
それを実現する為に、彼は三船に代表される金持ちと、官憲である警察を苦しめたかったんじゃないか?
だからその目的を達成した時点で、「自分の優秀性の誇示(警察の裏をかく)」も、「世間を苦しめる事(三船と失敗した警察を心身ともに苦しめる)」も達成できたから、人質の少年を簡単に開放したんだと思う。
人質を殺さなかったのは「この少年を解放しても、優秀な私を捕まえる事はできないよ」というメッセージだったはず。
山崎努が、犯行後、三船を讃える新聞記事を読んでブチ切れるシーンからも、読み取れると思う。
(つづく)
<467の続き>
その目的のためには、共犯や無関係のヤク中女を殺害する事になんら、ためらいは無かったろう。
だってそれらの人間も、彼にとって「憎むべき世間」の一部なわけだから。
上のような理由から、山崎努の動機を「上のものに対して嫉妬」「高みにいる人間を引き摺り下ろしたい」「自意識過剰」といったピンポイントではない、と思う。
この映画独特の後味の悪さっていうのは、ラストシーンの山崎の独白によって、
犯人山崎が観客である我々をも「憎むべき世間」の一部として憎んでいた事、彼に翻弄された三船もただの「世間における多数の中の一人」にすぎなかった事を思い知らされたからだ、と思う。
「こんなに俺は優秀なのに、どうして俺には金が無いんだ?どうしてこんな酷い環境で生活しなきゃならないんだ?」
と思い続けた結果、
「世間全体が憎い」という気持ちに発酵していったんじゃないかと思う。
それで、目に付いた窓から見える丘の上の豪邸の住人、三船を被害者に選んだ・・・と。
(この辺は、ラストシーンでの山崎の独白で語っていると思うけど)