【佐藤慶】激動の昭和史　東京裁判【小林正樹】

>>370
いやあ、凄い騒ぎだったよ。
あの事件が起こった映画館は近所だったから、騒ぎは毎日のように目の当たりにしていた。
マスコミに報じられたのはスクリーン切り裂き事件だけだったけど、あの事件が起こる前から、
映画館の周囲は朝から晩まで右翼の街宣車が取り囲んで、大音量で演説して営業妨害。
一方通行の狭い道を通っては、映画館の前を過ぎたところで角を曲がって裏側の路地に入って、の繰り返しで、
小さな町の中をグルグルと回り、抗議演説を怒鳴りまくり。
狭い角を強引に曲がろうとして道路標識を破壊する現場も目撃したし、
右翼と警官隊との怒鳴り合い、小競り合いは何度も見た。
（報道された事件以前にも、騒音防止条例違反や公務執行妨害罪で何人か逮捕されているはず）
自分はそれ以前に日教組の教研集会で右翼が集結して騒いでいるところも見たことがあったけど、
この時は狭い町のことなんで、それよりもっともっと凄まじい騒乱ぶりだった。
街宣演説のスピーカーのボリュームも違った。
で、アンプの出力レベルに比してボリュームを上げ過ぎていたから、何を喋っているのかも分からない。
「うぎゃうげんがこごーーーーっ」としか聞こえない。
でも、右翼にとっては営業妨害こそが目的だったから、それでもよかったんだろう。
当然、町のみんなが怒り、「どこどこの店（飲食店）が勇気を出して、迷彩服の男たちの集団の入店を拒否した」
という噂を聞いたら、直後にあの事件。
事件の直接の原因は、あの映画そのものではなく、
町のみんなから白い目で見られたことへの苛立ちだったんじゃないか、と、当の「町のみんな」は話していた。