田中絹代

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151この子の名無しのお祝いに
オレが、ボリビアのサンタ・クルスという街の郊外にある農園に仕事で派遣された時のことだった。
そこの農園の事務所には、「サンダカン」という名前の体長が150センチぐらいの大きな番犬がいた。
現地採用のインディオに、「どうしてあの犬の名前は”サンダカン”というんだ?」と聞いたら、「それは日本の素晴らしい
映画にちなんで名付けたんだ。日本の映画で”サンダカン”というのがあるだろ。あれを日本人の技師さんがオレ達に
見せてくれたんだ。それで、とても感動したんで、犬の名前を”サンダカン”にしたんだ」と言った。
オレはその当時、まだ、「サンダカン八番娼館・望郷」は見たことがなかったが、ものすごく残酷で暗い話だということは
知っていたので、「でも、なんだかとても残酷な話じゃなかったか?」と聞いたら、「ああ、残酷な話だったけど、でも、とても
いい映画だったよ」とインディオは答えた。
なんだか複雑な気持ちだった。「サンダカン」は日本の男の恥というような話なので、できれば、単純に「サムライ」とかいう
名前を犬に付けてもらいたかった。