闘論:鳥インフルエンザのワクチン接種 島田英幸氏/喜田宏氏
http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Shinbun/get_mainichi_html2.php?year=2005&file=VUjvfxJRUXsxPLUSonG37SR0Q== ◇感染自体は防げない メリットはない--北海道大獣医学部教授・喜田宏氏
現時点で鳥インフルエンザのワクチンを接種するメリットはない。養鶏農家に
も業界にも、国全体の経済や公衆衛生にもマイナスだ。接種すべきではない。
ワクチンを打てば感染が防げる、と期待するのは間違いだ。インフルエンザの
ワクチンは、鶏用も人間用も「不活化ワクチン」で、ウイルスから感染力を失わ
せてワクチンにしたものだ。不活化ワクチンは一般に、発病は防ぐが感染は
防げない。
人間の天然痘やポリオ対策にはワクチンが高い効果を発揮したが、これらは
感染予防効果のある「生ワクチン」だった。インフルエンザウイルスは、まず
呼吸器などの粘膜に感染する。感染防止には粘膜に抗体を作る必要がある。
しかし不活化ワクチンを注射する場所は皮下や筋肉だ。抗体は血液中にしか
できない。鶏への接種実験でも、感染は防げないとの結果が出ている。
接種直後なら見かけ上は防げたとの報告もあるが、数カ月後には感染も死も
防げなくなった。ワクチンで防げるのは発病だけだ。
接種すれば、感染しても症状が出ない鶏が放置され、周辺への感染源となり
かねない。こうして感染が次々に広がれば、病原性の弱いウイルスが、鶏を
次々と殺す強毒型に変異する可能性がある。人間に感染するように変異する
機会も増す。