★北大★人獣共通感染症リサーチセンターC

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闘論:鳥インフルエンザのワクチン接種 島田英幸氏/喜田宏氏

◇感染自体は防げない メリットはない--北海道大獣医学部教授・喜田宏氏

現時点で鳥インフルエンザのワクチンを接種するメリットはない。
養鶏農家にも業界にも、国全体の経済や公衆衛生にもマイナスだ。

接種すべきではない。

ワクチンを打てば感染が防げる、と期待するのは間違いだ。
インフルエンザのワクチンは、鶏用も人間用も「不活化ワクチン」で、ウイルスから感染力を失わせてワクチンにしたものだ。
不活化ワクチンは一般に、発病は防ぐが感染は防げない。

人間の天然痘やポリオ対策にはワクチンが高い効果を発揮したが、これらは感染予防効果のある「生ワクチン」だった。
インフルエンザウイルスは、まず呼吸器などの粘膜に感染する。
感染防止には粘膜に抗体を作る必要がある。

しかし不活化ワクチンを注射する場所は皮下や筋肉だ。
抗体は血液中にしかできない。
鶏への接種実験でも、感染は防げないとの結果が出ている。

接種直後なら見かけ上は防げたとの報告もあるが、数カ月後には感染も死も防げなくなった。
ワクチンで防げるのは発病だけだ。
接種すれば、感染しても症状が出ない鶏が放置され、周辺への感染源となりかねない。

こうして感染が次々に広がれば、病原性の弱いウイルスが、鶏を次々と殺す強毒型に変異する可能性がある。
人間に感染するように変異する機会も増す。

一部の鶏をワクチンを打たない「おとり鶏」として残し、ウイルスがきたら症状が出て分かるようにすればよいとの提案もある。
だが、おとり鶏が感染したら鶏舎の鶏をすべて殺処分するのがルールだ。