★北大★人獣共通感染症リサーチセンターC

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11Nanashi_et_al.
NBI対談 第5回
with 河岡義裕 Yoshihiro Kawaoka
かわおかよしひろ
東京大学医科学研究所
感染・免疫部門 
ウイルス感染研究分野教授
http://www.nbi.ne.jp/talk5.html 
1211:2009/06/12(金) 18:10:34
河岡義裕氏 プロフィール
昭和53年 北海道大学獣医学部卒業、獣医師免許取得
昭和55年 同大学院修士課程修了
鳥取大学農学部獣医微生物学講座助手
昭和58年 獣医学博士(北海道大学)取得
St. Jude Children's Research Hospital, Tennessee, Postdoctoral fellow.
昭和60年 同 Assistant Member (助教授研究員)
平成元年 同 Associate Member (準教授研究員)
平成8年 同 Member (教授研究員)
平成9年 ウイスコンシン大学獣医学部教授
平成11年 東京大学医科学研究所 細菌感染研究部教授
平成12年 東京大学医科学研究所 感染・免疫部門
ウイルス感染研究分野教授
現在に至る

学位 昭和58年 獣医学博士(北海道大学)
受賞暦 1991年、日本獣医学会賞
所属学会 日本ウイルス学会、日本獣医学会、米国ウイルス学会、
米国獣医学会

専門分野 ウイルス学
Journal Editorial Board
1996 - 現在 Journal of Virology
1997 - 現在 Virus Research
2001 - 現在 Virology
1999 - 2001 American Journal of Veterinary Research
1999 - 現在  "インフルエンザ"

公職、その他
1992 Special Review Committee, NIH (Grant reviewer)
1994-1998 Virology Study Section Member, NIH (Grant reviewer)
2000-現在 国際ウイルス分類委員会オルソミクソ属委員長
1311:2009/06/12(金) 18:14:39
河岡:ご存知かと思いますが、鳥インフルエンザは、中国をはじめとする様々な国の野性水禽類に
常在しています。これが飼育されている水禽に移り、さらに飼育家禽に移り、ヒトに移るという構図です。
鳥インフルエンザは、様々な国で常在しているとみていいと思います。

所: 野性水禽から飼育家禽、そしてヒトへの感染源は何ですか?

河岡:それは、主に糞便です。ですから、日本のように鶏舎に野鳥が自由に出入りしにくい構造の
飼育形態となっているところでは、感染が成立しにくい訳です。日本では、感染する可能性は低いと
思います。

所:そうですか、安心しました。ところで、何故ホンコンであのように時々鳥インフルエンザが問題に
なるのですか?

河岡:ホンコンで消費される鳥の7〜8割が中国本土からの輸入です。そしてホンコンでは、生きた鳥
を食料として市場で販売しています。消費者は、生きた鳥をマーケットで購入して、家庭で鳥を処理し
て調理します。世界でも家庭で鳥の処理を許しているの限られています。先程、申しましたように
感染源は糞便が主ですが気管や腸管にもウィルスがいます。家のキッチンでの解体は、したがって、
非常に危険です。ホンコンでヒトへの感染が成立する条件は、ここにあります。

所 なるほど。ということは、メードさんがアブナイということですか?

河岡: そうです。それとメードさんと一緒にいる子供です。

所:何故、鳥インフルエンザの常在国の中国でのヒトへの発生がないのですか?

河岡:報告がされていないだけだと考えられます。CDCのサーベランス・プログラムが他の国では徹底
していますが、中国では鳥インフルエンザよりも他に対処しなければいけない問題があり、その分鳥イン
フルエンザに対する認識が低くなっているのかもしれません。

所: 例えば、アメリカでも83年に鳥インフルエンザの発生がありましたが、ヒトへの伝搬がなかったのは
何故ですか?
1413:2009/06/12(金) 18:15:32
河岡:実は、ニューヨークにもlive poultry marketがあります。ここで生きた鳥を売っています。何故ヒト
に伝搬しなかったかは、むづかしい問題ですが、おそらくウィルス自体の性質の違いだと思われます。

所:良くわかりました。ところで、日本への影響ということを考えると、中国からのタマゴとか鶏肉の輸入
により鳥インフルエンザが日本で発生することは考えられますか?

河岡:その可能性は、ほとんどないと云えます。糞便のついたタマゴとか鶏肉なら別ですが。通常の
タマゴとか鶏肉であれば問題ありません。ウィルス汚染の可能性のある腸管とか呼吸器系の部位の
輸入はヤメた方がいいと思います。

所:すると、日本への鳥インフルエンザの侵入ルートとして考えられるのは、中国の野性水禽が日本で
飼育している鳥群の中に糞便をおとす可能性があるところということになりますか?

河岡: そうです。

所: 例えば、今すこしずつ増えてきたダチョウの放牧などはどうですか。

河岡:それは、絶対にアブナイですヨ。既に実験的にも水禽に常在するインフルエンザウィルスが
ダチョウに感染を引きおこすことが証明されていますから。

所:とすると、鳥の放牧スタイルというのは、イメージ的には消費者受けしますが、鳥インフルエンザの
観点からは問題ありますネ。

河岡: 非常に危険です。

所: 先生、最後の質問ですが、タマゴと鶏肉はお好きですか?

河岡:大好きです。私はよく朝ダシ巻きタマゴをたべます。ダシ巻きが一番すきです。

所: ありがとうございました。
15Nanashi_et_al.:2009/06/12(金) 18:23:13
『「ホンコンの生鳥市場を調査したいのだが、誰か一緒に行く研究者はいないだろうか?」
 ホンコン事件が起きたとき、私に電話でこう言ってきたのは、少し前にセント・ジュードから私を
送りだしてくれたばかりのドクター・ウェブスターだった。セント・ジュードには彼に同行するウイル
ス学者が一人しかいないため、ウィスコンシンの私に合同調査を提案してきたのである。私はこ
の申し出を受け、北大時代の恩師・喜田宏先生に話をもちかけた。こうして喜田先生の研究室の
高田礼人助手(現北海道大学教授)や鳥取大学の伊藤寿啓教授も加わり、97年11月にホンコン
へと向かった。このときの調査は大いに成果をあげ、ホンコンで人にうつった鳥インフルエンザの
源は、やはり生鳥市場にあったことが分かったのである。
 97年の12月になると、ホンコンの衛生局はニワトリやカモなど家禽類150万羽の殺処分を実施
した。この時点ですでに18人が感染し、そのうち6人が命を落としていたが、殺処分を境に感染は
終結した。しかし、これが終結ではなく、始まりだったことがのちに分かる。現在、ニワトリや人間
を襲っているのは、97年にホンコンで分離された鳥ウイルスの子孫なのだ。』
(「インフルエンザ危機(クライシス) 」 p.121〜)
http://www.amazon.co.jp/dp/4087203131/
http://science6.2ch.net/test/read.cgi/life/1200735765/67


『私たち人類とインフルエンザウイルスとのつきあいは、有史以前からつづいている。
インフルエンザの流行を最初に記録したのは、医学の父≠ニ呼ばれる古代ギリシャ人ヒポクラテスだ。
以来、多くの研究者がインフルエンザウイルスと闘ってきたが、いまだ撲滅には至っていない。』
(河岡義裕『インフルエンザ危機 (クライシス)』 「はじめに」)
http://science6.2ch.net/test/read.cgi/nougaku/1202735821/7


「ウイルスの脅威から地球を守る」
 パンデミック(世界的大流行)を起こさないための国としての対策を 
  ウイルス学者(東京大学感染症国際研究センター長) 河岡義裕さん
http://www.jili.or.jp/kuraho/2006/inochi/web04/i_web04.html
http://science6.2ch.net/test/read.cgi/life/1200735765/26