博士号を取得したのに定職に就けない「余剰博士」が増え続けているため、
文部科学省は来年度から、博士号取得者の進路を詳しく調べて問題点を分析、
博士の活躍の場を広げる方策を検討することを決めた。
まずは、定職を得る前に、国から生活費を受けながら大学や公的機関に
籍を置いて研究を続ける博士号取得者「ポストドクター」について、
期間終了後の進路などの実態把握に乗り出す。
文科省の統計によると、1990年代に同省が大学院を拡充して定員を増や
したため、ここ数年で博士が急増。2003年3月の博士課程修了者は約1万
4500人で、最近10年間で2倍に増えている。このうち約1万400人は自然
科学系の博士。
一方で、大学の教員や公的機関の研究者といった、多くの博士が就職を希望
する職種の採用人数はそれほど増えていない。民間企業も「博士は社会経験が
乏しく、視野も狭いので使いにくい」などの理由で博士の採用を避ける傾向がある。
このため、2003年の博士の就職率は54・4%と、最近10年間で約10ポイント
低下。自然科学系の就職率は60・9%にとどまる。本来、高度な専門知識を生か
して社会のために活躍すべき博士が職にすら就けないという“博士余り”現象が、
年々深刻になっている。
政府は博士救済策として「ポストドクター等1万人支援計画」を進めているが、
数年間の期間終了後は、やはり就職難に直面するため、「問題の先送りでしか
ない」などの批判も出ている。この事態を抜本的に改めるため、同省は国内の
博士の活動実態を詳細に調べたうえで課題を抽出。大学院の博士課程教育の
改善や、産業界の意識改革などを進め、博士が各方面で活躍できる社会の構築を急ぐ。
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